標題:機能性関与成分サラシア由来サラシノールの食後血糖値の上昇を抑制する機能に関する研究レビュー
目的:健常成人において、サラシア由来サラシノール(以下サラシノール)の食後血糖値上昇抑制作用を、サラシノールを含まない対照食品群と比較した臨床試験論文を総合的に評価した研究レビューで明らかにすることを目的とした。
背景:サラシア由来サラシノールの食後血糖値の上昇を緩やかにする機能については、サラシア属植物普及協会(以下協会)機能性表示ワーキンググループが 2015年に作成した研究レビューで評価されているが、その後臨床試験が新しく報告されたことから、最新情報をもとに更新した。
レビュー対象とした研究の特性:複数のデータベースを用いて、データベース開設あるいは情報搭載時から検索日までを対象とし、2018年7月6日~11日に検索した。採用論文は2報あり、いずれもランダム化比較試験である。1報は協会会員企業の出資によるもので、もう1報は協会会員企業が会員となる以前に出資したものだった。
主な結果:採用論文2報はいずれも空腹時血糖値が正常域または境界域 (126mg/dL 未満)の疾病に罹患していない日本人(18 歳未満の者、妊産婦、授乳婦は除く)を対象とした研究で、糖質を含む食事1回あたりサラシノールとして0.03~0.5 mgを摂取したとき、食後血糖値や、食事からの糖の吸収量を示す食後血糖の血中濃度曲線下面積(AUC 0-120 min)が対照食品群と比較して減少した。なお、サラシノールに起因すると考えられる健康被害はなかった。
科学的根拠の質:採用論文は、いずれもサラシノールを含む製品の販売企業が主宰した試験であり、真の結果と異なる方向に導かれる要因(バイアス)が生じた可能性がある。また、参加者数が少ない、試験の事前登録がされていない、群分け方法の記載がないなど、バイアスを高める事項もあった。しかし、研究レビューの目的に対して、いずれの研究も肯定的で、一貫した結果が得られており、バイアスも基準以下であったことから、今後の研究によって結果が大きく変更される可能性は低いと考えられる。
標題:機能性関与成分バナバ葉由来コロソリン酸による空腹時血糖値の低下機能に関する研究レビュー
目的:バナバ葉由来コロソリン酸の空腹時血糖値に対する機能を明らかにするため、健常者を対象として、バナバ葉由来コロソリン酸の経口摂取による空腹時血糖値に与える影響について、システマティックレビューを実施した。
背景:バナバ葉由来コロソリン酸の血糖値上昇抑制機能についてはヒトでの研究も行われているが、総合的に評価した報告は見られなかった。そこで、健常者がバナバ葉由来コロソリン酸を摂取したときの血糖値を低下させる機能について研究レビューを行い、その科学的エビデンスの確認を行うこととした。
レビュー対象とした研究の特性:PubMed、The Cochrane Library、医中誌Webを対象として、最終的に1報を採用した。文献は、空腹時血糖値が高めの健常成人を対象としており、バナバ葉由来コロソリン酸の摂取が血糖値に及ぼす影響についてプラセボ摂取と比較したものであった。
主な結果:空腹時血糖値が高めな (100~125 mg/dL 未満)の健常成人を対象とした研究で、バナバ葉由来コロソリン酸として0.9㎎/日を12週間継続摂取したとき、空腹時血糖値(変化率)、HbA1cが有意に低下した。なお、バナバ葉由来コロソリン酸に起因すると考えられる健康被害はなかった。
科学的根拠の質:採用論文が1報しかないため、今後さらなる研究が必要である。ただし、採用論文におけるバイアスリスクは、非直接性に問題は見られないと判断したため、低いと考えられた。
標題:機能性関与成分GABAの血圧低下に関するシステマティックレビュー
目的:健常な成人(正常血圧者および血圧が高めの人)および軽症高血圧者がGABAを含む食品またはプラセボ食品を摂取した場合の血圧低下に関する影響を検討することを目的とした。
背景:GABAの血圧低下機能について、論文は多数報告されているが、総合的に評価した報告はない。GABAに関する論文を総合的に評価することによって、血圧低下機能に関するシステマティックレビューを実施し、その機能性について確認した。
レビュー対象とした研究の特性:日本語の文献(1975年以降に書かれたもの)、英語の文献(1975年以降に書かれたもの)を対象とし、健常な成人(正常血圧者および血圧が高めの人)および軽症高血圧者に対するGABAの血圧低下に関する論文を検索し(最終検索日:2022年5月12日)、最終的に7報の論文を採用した。採用した論文はいずれもランダム化比較試験(研究の対象者をランダムに2つのグループに分け、一方にはGABAを含む食品を摂取させ、もう一方にはGABAを含まない食品を摂取させて比較する臨床試験)であった。
主な結果:健常な成人(正常血圧者および血圧が高めの人)および軽症高血圧者において、血圧低下作用を示す指標である収縮期血圧(心臓が収縮した時に指し示す最大血圧)と拡張期血圧(心臓が拡張した時に指し示す最小血圧)はプラセボ群と比較して有意な低下がみられた。正常血圧者のみを対象とした場合は正常な血圧を維持していた。血圧が高めの人に対しては1日当たり20mg~80mgのGABAの摂取で有意な血圧低下の効果が認められた。
科学的根拠の質:有効性が示されなかった研究が公表されていない可能性や研究方法にバイアス(偏り)があり、結果が疑わしい可能性のものがあるが、採用した論文は信頼性の高い無作為化プラセボ対象二重盲検比較試験が多かったことから、それぞれの試験の信頼性は高いものと判断した。
標題:機能性関与成分GABAによる仕事や勉強による一時的な精神的ストレスを緩和する機能に関する研究レビュー
目的:健常な成人日本人がGABAを含む食品またはプラセボ食品を摂取した場合の精神的負荷による一時的な精神的ストレスの程度に違いがあるか検討することを目的とした。
背景:現代社会において、ストレスは避けて通れない問題である。GABAにはストレス緩和効果があることが一般的に知られている。GABAに関する論文を総合的に評価することによって、ストレスを緩和する機能に関するシステマティックレビューを実施し、その機能性について確認した。
レビュー対象とした研究の特性:日本語の文献(1975年以降に書かれたもの)、英語の文献(1975年以降に書かれたもの)を対象とし、健常な成人に対するGABAの精神的負荷による一時的な精神的ストレスに関する論文を検索し(最終検索日:2022年3月17日)、最終的に5報の論文を採用した。採用した論文はいずれもランダム化比較試験(研究の対象者をランダムに2つのグループに分け、一方にはGABAを含む食品を摂取させ、もう一方にはGABAを含まない食品を摂取させて比較する臨床試験)であった。
主な結果:主観的疲労感、唾液中クロモグラニンA、唾液中コルチゾールを指標として用いストレスを評価した。これらの指標は一時的な精神的ストレスを評価するのに一般的に用いられ、表示しようとする機能性を評価するのに適した指標であると言える。これらすべての指標で、健常な成人日本人が28mg~100mgのGABAの摂取によって、一時的な精神的ストレスを有意に緩和させることが示された。
科学的根拠の質:採用した論文の中には、研究方法にバイアスがあり、結果が疑わしい可能性のものがあった。また、有効性が示されなかった研究が公表されていない可能性もあげられるが、ほぼすべての論文で適切な被験者数かつ本研究レビューの目的に合った条件で試験が行われていた。以上より本研究レビューで評価した論文は、科学的根拠としての問題のないものであると判断した。 |