■酢酸
【標題】
酢酸の内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少作用に関するシステマティックレビュー
【目的】
肥満気味の健常者の方が酢酸を摂取することにより、内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少作用が見られるかを確認する。
【背景】
近年、食生活の欧米化や運動不足から肥満の人が増えている。「肥満」とは、体重が多いだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指し、特に内臓脂肪型肥満の人は糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを発症する確率が高くなることが知られている。そこで今回、肥満気味の健常者の方に対する酢酸の内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少作用に関するシステマティックレビューを実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】
国内外の文献を調査・収集し、肥満気味の健常成人を対象に酢酸を用いた内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少作用について検討した。対象となるランダム化比較試験(RCT)論文の質を評価し、内臓脂肪面積およびウエスト周囲径について、酢酸摂取群と非摂取群の差を比較した。
【主な結果】
1報のRCT論文が抽出された。1日当たり750mgの酢酸を12週間摂取した群では非摂取群と比較して内臓脂肪面積およびウエスト周囲径の減少が確認されたことから、科学的根拠があると判断した。
【科学的根拠の質】
公表されていない研究による偏りや各種バイアスリスクは否定できないが、抽出された論文は十分な科学的な根拠があると判断された。ただし今後の研究によってはシステマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続調査が必要である。
■難消化性デキストリン(食物繊維として)
1.食後の血中中性脂肪の上昇抑制機能
【標題】
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
【目的】
空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人(健常成人、正常高値域およびやや高めの成人)に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用が見られるかを確認する。
【背景】
脂質異常症は動脈硬化の危険因子であり、食後高脂血症が動脈硬化症や冠動脈疾患の発症を早めるリスク因子であることから、食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する食品素材が注目視されている。難消化性デキストリンは、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用を有することが報告されており、特定保健用食品にも使用されている。そこで今回、難消化性デキストリンの食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】
国内外の文献を調査・収集し、空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人(健常成人、正常高値域およびやや高めの成人)を対象とした食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用について検討した。各RCT論文の質の評価を行い、「食後血中中性脂肪値(2,3,4時間)」および「血中濃度曲線下面積(AUC0-6h)」の実測値および変化量について、難消化性デキストリン摂取群と対照群の差のデータを統合した。
【主な結果】
9報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が食後血中中性脂肪値を有意に低下させることが確認された。なお、追加的解析の結果、健常成人のみにおいても肯定的な結果であったことから、科学的根拠があると判断した。また難消化性デキストリン(食物繊維として)5gを食事と合わせて摂取することで、食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する作用が期待できると評価した。
【科学的根拠の質】
公表されていない研究による偏り、試験の無作為化による偏りは否定できないが影響は小さいと考えられる。また、各種バイアスリスクも高くない。エビデンスの強さも十分な科学的な根拠があると判断されたが、今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続調査が必要である。
2.食後の血糖値の上昇抑制機能
【標題】
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
【目的】
健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、食後血糖値の上昇抑制作用が見られるかを確認する。
【背景】
糖尿病患者数の増加は極めて深刻な問題である。食物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスクの改善効果が報告されており、食物繊維が有する血糖値調節効果が期待されている。難消化性デキストリンは、「食後血糖値の上昇を抑制する」といった表示内容の許可を受けた特定保健用食品に使用されている。そこで今回、難消化性デキストリンの食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】
国内外の文献を調査・収集し、健常成人を対象とした食後血糖値の上昇抑制作用について検討した。各RCT論文の質の評価を行い、「食後血糖値30分」、「食後血糖値60分」、「食後血糖値の濃度曲線下面積(AUC0-120min)」の評価項目について、難消化性デキストリン摂取群と対照群の差のデータを統合した。
【主な結果】
43報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が有意に食後血糖値を低下させることが認められた。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)摂取量の部分集団解析を行った結果、難消化性デキストリン(食物繊維として)5gを食事と合わせて摂取することで、食後血糖値の上昇抑制作用が期待できると評価した。
【科学的根拠の質】
公表されていない研究による偏りは否定できないが、影響は小さいと考えられる。また、各種バイアスリスクも高くない。エビデンスの強さも十分な科学的な根拠があると判断されたが、今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続調査が必要である。
3.おなかの調子を整えて便通を改善する機能
【標題】
難消化性デキストリンを用いた健常成人あるいは便秘傾向の成人に対する整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
【目的】
健常成人および便秘傾向の成人に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、整腸作用(便通改善作用)が見られるかを確認する。
【背景】
難消化性デキストリンは水溶性食物繊維の一種であり、便通および便性改善作用を持つことが報告されている。便通改善作用は難消化性デキストリンが消化酵素による分解をほとんど受けず、その大部分が大腸に到達し糞便容量を増大するためと推定されている。難消化性デキストリンは整腸作用を目的とした特定保健用食品にも使用されている。そこで今回、難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】
国内外の文献を調査・収集し、健常成人及び便秘傾向の成人を対象とした整腸作用(便通改善作用)について検討した。各RCT論文の質の評価を行い、「排便回数」および「排便量」の測定値について、難消化性デキストリン摂取群と非摂取群の差のデータを統合した。
【主な結果】
26報のRCT論文が抽出された。「排便回数」、「排便量」において、非摂取群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な便通改善作用が確認された。なお、追加的解析の結果、健常成人のみにおいても肯定的な結果であったことから、科学的根拠があると判断した。また難消化性デキストリン(食物繊維として)の整腸作用(便通改善作用)が期待される1回摂取量は5gが適切であると評価した。
【科学的根拠の質】
公表されていない研究による偏りは否定できないが影響は小さいと考えられる。また、各種バイアスリスクも高くない。エビデンスの強さも十分な科学的な根拠があると判断されたが、今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続調査が必要である。また整腸作用は運動やその他生活習慣も重要な要因であり、それらの影響について継続した研究が必要と考えられる。 |