【A:脂肪の燃焼に及ぼす影響】
1.標題
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)摂取が脂肪の代謝(脂肪の分解または脂肪の燃焼)に及ぼす影響
2.目的
健常成人において、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)を摂取すると、プラセボ摂取時と比較して、脂肪の代謝(脂肪の分解または脂肪の燃焼)を高める機能を有するか検証することを目的とした。
3.背景
これまで葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)が脂肪の代謝(脂肪の分解または脂肪の燃焼)を高める機能を有するかを網羅的に調べた研究は見当たらないことから、システマティックレビューを実施した。
4.レビュー対象とした研究の特性
健常成人における葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の経口摂取が脂肪の代謝(脂肪の分解または脂肪の燃焼)に及ぼす影響をプラセボと比較した研究(日本語、英語問わない)を検索対象とした。内容を精査し、1研究を評価対象とした。該当した文献は1報のみであったが、日本で実施された信頼性の高いヒト試験であった。
5.主な結果
試験対象者は健常成人男性80名で、摂取期間は8週間、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として)の一日摂取量は35mgであった。自転車エルゴメーターによる運動負荷時(日常の身体活動と同程度)において脂肪分解の指標である血中のグリセロールと遊離脂肪酸の運動負荷時AUC、脂肪燃焼の指標である血中の総ケトン体の運動負荷後AUCの有意な増加が認められた。また、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)摂取の安全性においても、特に懸念は認められなかった。
6.科学的根拠の質
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)35 mg/日の摂取は、脂肪の代謝(脂肪の分解または脂肪の燃焼)を高める機能を有することが示唆された。
但し、本研究における限界として、採用論文数が少なく潜在的に出版バイアス(※1)が存在する可能性や、症例減少バイアス(※2)といったバイアスの混入は否定できない。
※1)出版バイアス:肯定的な研究結果がそうでない研究結果に比べて出版されやすいために起こる結果の偏りのこと。
※2)症例減少バイアス:解析から除外されている被験者数が多い場合に生じる偏りのこと。
【B:エネルギー(カロリー)消費量に及ぼす影響】
1.標題
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)摂取がエネルギー消費量に及ぼす影響
2.目的
健常成人において、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)を摂取すると、プラセボ摂取時と比較して、エネルギー消費量が増加するか検証することを目的とした。
3.背景
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の摂取が、エネルギー消費量を増加させるとの報告があり、そのヒト試験結果を総合的に評価するため、システマティックレビューを実施した。
4.レビュー対象とした研究の特性
健常成人における葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の摂取がエネルギー消費量に及ぼす影響に関する研究を検索対象とした。内容を精査し、1研究を評価対象とした。該当した文献は1報のみであったが、日本で実施された信頼性の高いヒト試験であった。利益相反として、著者に葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の関連者(製造又は販売を行う企業社員等)が含まれていた。
5.主な結果
対象者は健常成人男性61名で、摂取期間は8週間、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として)の摂取量は35mg/日であった。自転車エルゴメーターによる運動負荷時(3.5メッツ程度:日常生活活動時や軽度な運動時に相当)のエネルギー消費量を評価し、有意な増加が認められた。また、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)摂取の安全性においても、特に懸念は認められなかった。
6.科学的根拠の質
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)35mg/日の摂取は、エネルギー消費量を増加させる機能を有することが示唆された。
但し、本研究における限界として、採用論文数が少なく潜在的に出版バイアス(※1)が存在する可能性や、症例減少バイアス(※2)といったバイアスの混入は否定できない。
※1出版バイアス:肯定的な研究結果がそうでない研究結果に比べて出版されやすいために起こる結果の偏りのこと。
※2症例減少バイアス:解析から除外されている被験者数が多い場合に生じる偏りのこと。
【C:腹部脂肪、体重、胴囲に及ぼす影響】
1.標題
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)摂取が腹部脂肪、体重、胴囲に及ぼす影響
2.目的
健常成人において、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)を摂取すると、プラセボ(偽薬)摂取時と比較して、腹部脂肪面積、体重、胴囲が減少するか検証することを目的とした。
3.背景
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の経口摂取が、腹部脂肪面積、体重、胴囲を減少させるとの報告があり、そのヒト試験結果を総合的に評価するため、システマティックレビューを実施した。
4.レビュー対象とした研究の特性
健常成人(特定保健用食品用の試験方法に準じ、肥満Ⅰ度(BMIが25以上30未満)の者および正常高値(BMIが23以上25未満)の者を含む)における葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の経口摂取が腹部脂肪面積、体重、胴囲に及ぼす影響に関する研究(日本語、英語問わない)を検索対象とした。2021年4月20日に論文を検索し、内容を精査した上でRCTの6研究を評価対象とした。なお、6研究は、全て日本で実施された信頼性の高いヒト試験であった。利益相反として、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の関連者(製造又は販売を行う企業社員等)を著者に含む研究又は葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)を含む製品の販売を行う企業より財政的支援を受けた研究だった。
5.主な結果
6研究における対象者は30~130例で、摂取期間は4~12週、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の一日摂取量は主として22.0~42.0 mgであった。
メタアナリシスを実施した結果、問題となるような出版バイアス(※)は認められず、腹部脂肪面積、体重、胴囲の有意な減少が認められた。また、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)の摂取による、副作用等の健康被害はなかった。なお、肥満症に罹患していないと明確に判断できる者のみの解析結果においても、腹部脂肪面積、体重、胴囲の有意な減少が認められた。
※出版バイアス:肯定的な研究結果がそうでない研究結果に比べて出版されやすいために起こる結果の偏りのこと。
6.科学的根拠の質
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類)は、主として22.0~42.0 mg/日の摂取により、腹部脂肪面積、体重、胴囲を減少させることが示唆された。但し、本研究における限界として、多くの研究で研究計画は事前登録されておらず、利益相反の問題も存在するため、バイアスの混入は否定できない。また、12週間を超えて摂取した場合の影響は不明である。安全性については、別の切り口の評価が必要である。
(構造化抄録) |