紫外線からの肌の保護について
【標題】
パプリカ由来キサントフィルによる紫外線刺激からの肌の保護を助ける機能に関するシステマティックレビュー
【目的】
健常人の肌に対する、パプリカ由来キサントフィルの摂取による紫外線刺激からの肌の保護を助ける機能について、ヒト試験論文のシステマティックレビューを実施し、検証した。
【背景】
紫外線を浴びることで、我々の皮膚上では活性酸素が生成される。生成された活性酸素は日焼けを引き起こすだけでなく、様々な経路を介してシワやシミ、皮膚がんなど複数の皮膚疾患の要因となり得る。生涯受け続ける紫外線の影響は大きく、紫外線によるダメージを軽減することが重要とされる。
パプリカ(Capsicum annuum)はビタミン類やカロテノイドを豊富に含む野菜であるが、特にパプリカは他の野菜類と比較して、カプサンチン、カプソルビン、カプサンチンエポキシド、クリプトカプシン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ククルビタキサンチンといったキサントフィル類を多く含んでおり、中でも赤色の元であるカプサンチンやカプソルビンは活性酸素種の中でも反応性の高い一重項酸素を除去する強い抗酸化作用があることが報告されている。また同じキサントフィル類に分類されるアスタキサンチンの摂取により紅斑が抑制された報告がある。
【レビュー対象とした研究の特性】
PubMed、J-DreamⅢ、医中誌Webを、情報源として用いるデータベースとして文献検索を行った(最終検索日2020年1月26日)。その結果、計19報の文献が検索され、採用基準で選抜した結果、計1報が採用された。最終的にその1報の文献を評価した。
【主な結果】
採用された1報の文献から、パプリカ由来キサントフィルを9 mg以上含む食品を紫外線によって肌が赤くなりやすい(フィッツパトリックのスキンタイプⅡ)健常人が紫外線照射後に摂取することで、紫外線照射により生じる紅斑に関する項目である最小紅斑量(MED)と、明度が有意に改善される機能が認められ、最小黒化量(MTD)、発赤において改善傾向が認められる肯定的な結果が得られた。いずれの文献も日本人を対象とした試験が実施されており、パプリカ由来キサントフィル摂取による紫外線刺激からの肌の保護を助ける機能は、科学的根拠があると判断した。
【科学的根拠の質】
本研究レビューの限界として、採用文献が1報のみであったこと、対象者がフィッツパトリックのスキンタイプⅡに属する健常人に限定されていること、著者に試験食品提供企業の社員が含まれることから、研究のバイアスリスクを完全に否定できないことが限界として挙げられる。しかし採用された文献は信頼性の高い試験デザインのRCT(二重盲検ランダム化交差比較試験)で実施されており、十分なエビデンスを有していると考えられる。したがって、さらなるエビデンスの充実は必要ではあるが、パプリカ由来キサントフィルを含む食品の摂取により健常人の肌に対し、紫外線刺激からの肌の保護を助ける機能を発揮することの有効性が示唆された。
体脂肪とBMIの低減効果について
【標題】
パプリカ由来キサントフィルによるBMIが高めの健常者における体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)とBMIの低減効果に関するシステマティックレビュー
【目的】
BMIが高めの健常成人に対するパプリカ由来キサントフィルの摂取による腹部体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)とBMIを低減させる機能について、ヒト試験論文のシステマティックレビューを実施し、検証した。
【背景】
肥満は食生活の乱れや運動不足などの生活習慣を原因とし、脂肪細胞が増殖、肥大することにより体脂肪が蓄積し、体重が増加した状態のことである。肥満はインスリン抵抗性や糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の動脈硬化のリスクファクターとなる生活習慣病を引き起こす因子となり得る。日常生活において肥満状態を改善することは動脈硬化を予防し、日本人の死因の上位を占める脳・心血管疾患への罹患を避けるうえで重要とされる。
パプリカ(Capsicum annuum)はナス科トウガラシ属の多年草で、その果実は赤、黄、橙色等の様々な色彩のものがあり、加熱調理の他、生食が可能である。また、果実の粉末が料理の色付けを目的とした香辛料として使用されるなど広く利用されている野菜である。パプリカ果実にはカロテノイドに属するキサントフィル類が色素として含まれることが知られており、化合物としてはカプサンチン、カプソルビン、β-クリプトキサンチン、ゼアキサンチンなどがこれに当たる。中でもカプサンチンはパプリカに高含有であり、主要なキサントフィルである。キサントフィルは強力な抗酸化活性を示すため活性酸素除去に関する研究が行われているほか、脂質代謝の改善作用や、抗肥満作用も示すという報告がある。そこで本研究レビューでは、肥満気味(BMIが高め)の健常者を対象に、パプリカ由来キサントフィルの摂取がプラセボ群と比較した場合に体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)の低減に有効であるかどうかを検証した。
【レビュー対象とした研究の特性】
PubMed、J-DreamⅢ、医中誌Webを、情報源として用いるデータベースとして文献検索を行った(最終検索日2020年1月26日)。その結果、計39報の文献が検索され、採用基準で選抜した結果、1報が採用され、評価を行った。
【主な結果】
採用された文献から、パプリカ由来キサントフィル9.0 mgを含む食品をBMIが25以上30 kg/m2未満の健常成人男女が摂取することで体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)とBMIが減少する効果を示す肯定的な結果が得られた。当該文献の被験者はすべて日本人であり、パプリカ由来キサントフィルの摂取が体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)を減少させる機能は、科学的根拠があると判断した。
【科学的根拠の質】
採用された文献は1報(Kakutani 2016)であった。試験デザインはRCT(プラセボ対照二重盲検ランダム化平衡群間比較試験)でありアウトカムとして体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)変化およびBMI変化を評価していた。介入群で対照群と比較して皮下脂肪面積、総脂肪面積およびBMIの有意な減少が認められた。よってパプリカ由来キサントフィルを含む食品の摂取により体脂肪(皮下脂肪および総脂肪)とBMIが減少する機能を発揮することの有効性が示唆された。 |