【難消化性デキストリン(食物繊維)】
ア 標題
難消化デキストリンの摂取による
①食後血糖値上昇抑制作用
②食後血中中性脂肪値上昇抑制作用
③整腸作用(便通改善作用)
に関する研究レビュー
イ 目的
プラセボを対照として難消化性デキストリンを摂取することにより下記作用を確認することを目的とした。
①健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)に対する食後血糖値の上昇抑制作用
②空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人に対する食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用
③健常成人あるいは便秘傾向の成人に対する整腸作用(便通改善作用)
ウ 背景
①食後血糖値上昇抑制作用
糖尿病患者数の増加は日本において極めて深刻な問題のひとつとなっており、食事療法などにより食後血糖値をコントロールすることが非常に重要である。食事と共に難消化性デキストリンを摂取すると、食後血糖値の上昇を抑制するとの報告があり、難消化性デキストリンの食後血糖値上昇抑制作用に関する研究レビューを実施した。
②食後血中中性脂肪値上昇抑制作用
生活習慣病の患者数が増加しており、食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する食品素材が注目視されている。特定保健用食品の関与成分でもある難消化性デキストリンが、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用を有することが報告されていることから、難消化性デキストリンの食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用に関する研究レビューを実施した。
③整腸作用(便通改善作用)
生活習慣病の患者数が増加している。食生活を見直すことが注目視されている中で、食物繊維が生活習慣病に対する予防効果があると言われており、第6の栄養素としてその重要性が認識されている。難消化性デキストリン(食物繊維)は、便通および便性改善作用を持つことが報告されていることから、特定保健用食品の関与成分でもある難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)に関する研究レビューを実施した。
エ レビュー対象とした研究の特性
①食後血糖値上昇抑制作用
検索期間を限定せずに、検索日(2014年12月25日、2015年1月5日)までの全範囲を対象に、健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)において難消化性デキストリンを用いて食後血糖値の上昇抑制作用について報告した文献があるかを検索した。その結果、ランダム化比較試験(クロスオーバーを含む)が実施された43報を評価対象とした。
②食後血中中性脂肪値上昇抑制作用
検索期間を限定せずに、検索日(2015年6月25日)までの全範囲を対象に、健常成人(空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満)において難消化性デキストリンを用いて食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用について報告した文献があるかを検索した。その結果、ランダム化比較試験が実施された9報を評価対象とした。
③整腸作用(便通改善作用)
検索期間を限定せずに、検索日(2014年12月15日、2015年1月5日)までの全範囲を対象に、健常成人もしくは便秘傾向の成人において難消化性デキストリンを用いて整腸作用(便通改善作用)について報告した文献があるかを検索した。その結果、ランダム化比較試験が実施された26報を評価対象とした。
オ 主な結果
①食後血糖値上昇抑制作用
採用論文の難消化性デキストリン(食物繊維として)の1回あたりの摂取量は4 g~16 gであった。難消化性デキストリンを摂取した際の「食後血糖値(30分)」、「食後血糖値(60分)」、「食事直後~120分までの血糖値の濃度曲線下面積(濃度変化を表したグラフより下の領域の面積)」を評価した。3項目いずれも、難消化性デキストリンを食事と共に摂取することにより食後血糖値を有意に低下させた。なお、空腹時血糖値が110mg/dL未満の正常域の者においても同様の結果だった。
②食後血中中性脂肪値上昇抑制作用
採用論文の難消化性デキストリン(食物繊維として)の1回あたりの摂取量は5 g~9 gであった。難消化性デキストリンを摂取した際の「食後血中中性脂肪値(2、3、4時間)」、「食事直後~6時間までの中性脂肪値の濃度曲線下面積(濃度変化を表したグラフより下の領域の面積)」を評価した。4項目いずれも、難消化性デキストリンを食事と共に摂取することにより食後中性脂肪値を有意に低下させた。なお、空腹時血中中性脂肪値150mg/dL未満の健常成人においても同様の結果だった。
③整腸作用(便通改善作用)
文献26報における難消化性デキストリン(食物繊維として)の1回あたりの摂取量は3.8g~7.7 gであった。難消化性デキストリンを摂取した際の「排便回数」「排便量」を評価した。2項目いずれも、難消化性デキストリンを摂取することにより有意な便通改善作用が認められた。
カ 科学的根拠の質
公表バイアスの存在は否定されなかったが、本研究レビューは十分な数の論文を元に行なっており、各種のバイアスリスクも高くなく、非直接性、不精確性、非一貫性はないと判断し、エビデンスの強さも十分な根拠があると判断した。研究の限界として、今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性がある。また、食事療法、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響についてもさらなる研究が必要であるが、現時点において科学的根拠の質は十分であると考えられた。
【ヒハツ由来ピペリン】
ア 標題
ヒハツ由来ピペリンの高めの血圧の改善による正常な血圧の維持に関する研究レビュー
イ 目的
プラセボを対照としてヒハツ由来ピペリンの摂取が、血圧低下作用により血圧が高めの方の血圧を改善し、正常な血圧を維持する機能があるか検証することを目的とした。
ウ 背景
ヒハツ由来ピペリンには血管拡張作用が知られている。また、複数の臨床試験が実施され、ヒハツ由来ピペリンの摂取が血圧低下作用を示すことが確認されている。しかし、ヒハツ由来ピペリンの摂取が、血圧が高めの方の血圧を改善し、正常な血圧を維持する機能に関しては、研究レビューが報告されていないため、研究レビューを実施した。
エ レビュー対象とした研究の特性
2021年3月24日に、検索期間を限定せずに、検索日までの全範囲を対象に、ヒハツ由来ピペリンの摂取が、成人男女で血圧が高めの方(正常高値血圧者、Ⅰ度高血圧者)の血圧を改善し、正常な血圧を維持する機能を報告した文献があるかを検索した。その結果、質の高い試験が行われた2報を評価対象とした。なお、2報ともに届出者(大正製薬株式会社)が関与したものであった。
オ 主な結果
採用文献2報は、血圧が高めの方を含む日本人成人男女(特定保健用食品の範囲を超えない)を対象に、ヒハツ由来ピペリンを90~114.2μg/日摂取した場合の収縮期血圧及び拡張期血圧を評価したものであった。いずれの文献も、プラセボと比較して血圧を有意に低下させ、血圧を改善することで正常な血圧を維持することが示された。また、疾病に罹患していない者(正常高値血圧者)のみの評価結果においても同様に、摂取1週後からプラセボと比較して血圧を有意に低下させ、高めの血圧を改善することで正常な血圧を維持することが示された。
カ 科学的根拠の質
採用文献は、症例減少バイアスなどのバイアスリスクが含まれるが、いずれも質の高い試験であり、エビデンスレベルの高いものである。一方で研究の限界として、採用文献数が2報と少なく、出版バイアスの可能性も否定できないが、いずれの文献も肯定的な内容で一貫性のある結果が得られており、表示しようとする機能性を否定するものではないと判断した。 |