1【標題】
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する整腸作用(便通改善作用)関
する検証
【目的】
健常成人あるいは便秘傾向の成人に対して難消化性デキストリンを摂取するこ
とにより、整腸作用(便通改善作用)が見られるかを確認する。
【背景】
水溶性食物繊維の一種である難消化性デキストリンとは、トウモロコシでん粉
に微量の塩酸を加えて加熱し、α-アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理して得られた食物繊維画分を分取した水溶性の食物繊維であり、液体クロマトグラフィーを用いた分析により定性および定量が可能な成分である。
難消化性デキストリンは、便通および便性改善作用を持つことが報告されている。便通改善作用に関しては、難消化性デキストリンが消化酵素による加水分解をほとんど受けず、その大部分が大腸に到達することにより、糞便容量を増大するためと推定されている。
【レビュー対象とした研究の特性】
論文の検索日:
検索対象期間:検索日までに公表されているものすべてを対象とした
対象集団の特性:健常および便秘傾向者の成人男女
最終的に評価した論文数:26報
研究デザイン:ランダム化比較試験
利益相反情報:松谷化学工業㈱より依頼を受け、㈱薬事法マーケティング事務所にて論文スクリーニング業務、統計解析業務等を実施した。また、調査にあたり必要な情報について、松谷化学工業㈱より入手した。
【主な結果】
26報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、「排便回数」「排便量」におい
て対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な便通改善作用が認められた。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)摂取量の中央値は5gであった。難消化性デキストリン(食物繊維として)5gを摂取することによって、整腸作用(便通改善作用)が期待できることが示された。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは十分な被験者数で評価されており、効果のない未発表論文を
想定しても相当数存在しない限り効果が覆ることはないと判断されました。これ
らのことによりエビデンスの強さはA(強い)と判断されました。ただし、今後の
研究によっては結果が変わる可能性があるため継続した調査が必要であると考え
ます。
2【標題】
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する食後血糖値の上昇抑制作用に
関する検証
【目的】
健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)に対して難消化性デキストリンを摂
することにより、食後血糖値の上昇抑制作用が見られるかを確認する。
【背景】
血糖値等の代謝系健診項目に異常があった者は、43%が糖尿病に罹患し、さらに
は「異常なし」の人に比べて10年後の医療費が約1.7倍かかるという調査結果が
あり、経済的な側面から見ても糖尿病を罹患することによる影響は大きい。糖尿病
に罹患しないためには、食事療法などにより食後血糖値をコントロールすること
が非常に重要であると言われている。日中の食後血糖値が管理されなくなると、夜
間空腹時の血糖値が段階的に悪化し、糖尿病が増悪する2)という調査結果があるこ
とからもわかるように、食後血糖値の是正は意義がある。中でも食事療法では、食
物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスクの改善効果が報告されており3)、食物
繊維が有する血糖値調節効果が期待されている。
【レビュー対象とした研究の特性】
論文の検索日:
検索対象期間:検索日までに公表されているものすべてを対象とした
対象集団の特性:機能性表示食品の対象者である「生活習慣病などの疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)」とした
最終的に評価した論文数:43報
研究デザイン:ランダム化比較試験
利益相反情報:松谷化学工業㈱より依頼を受け、㈱薬事法マーケティング事務所にて論文スクリーニング業務、統計解析業務等を実施した。また、調査にあたり必要な情報について、松谷化学工業㈱より入手した。
【主な結果】
43報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が有意に食後血糖値を低下させることが認められた。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)摂取量の中央値は5 gであった。難消化性デキストリン(食物繊維として)5 gを食事と合わせて摂取することによって、食後血糖値の上昇を抑制する作用が期待できることが示された。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは十分な被験者数で評価されており、効果のない未発表論文を
想定しても相当数存在しない限り効果が覆ることはないと判断されました。これ
らのことによりエビデンスの強さはA(強い)と判断されました。ただし、今後の研究によっては結果が変わる可能性があるため継続した調査が必要である。また、食事療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられる。
3【標題】
難消化性デキストリンの食後血中中性脂肪上昇抑制作用に関する検証
【目的】
本研究の目的は、空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人(空腹時血中中性
脂肪値150mg/dL未満の健常成人および空腹時血中中性脂肪値150以上、200mg/dL
未満の軽症者※)に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、食後血中
中性脂肪値の上昇抑制作用が見られるかを確認することである。
【背景】
高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化疾患や虚血性心疾患を誘発する要因となっており、特に脂質異常症は動脈硬化の危険因子であることから、食生活の改善などによる一次予防が望まれている1) 。さらに近年、脂質異常症の1つとして食後に血中中性脂肪値の高い状態が長時間継続する食後高脂血症が、動脈硬化症や冠動脈疾患の発症を早めるリスク因子であることが明らかとなり、食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する食品素材が注目視されている。
難消化性デキストリンは、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用を有することが報告されている。日本では、難消化性デキストリンは「食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制する」といった表示内容の許可を受けた特定保健用食品は16品目となっている。
【レビュー対象とした研究の特性】
論文の検索日:
検索対象期間:検索日までに公表されているものすべてを対象とした
対象集団の特性:健常成人(空腹時血中中性脂肪150mg/dL未満)および機能性表示食品の届出等に関するガイドラインで示された「特定保健用食品の表示許可等について」(平成26年10月30日付け消食表第259号)の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成時の留意事項」において特定保健用食品の試験方法として記載された対象被験者の範囲(正常高値域:空腹時血中中性脂肪値120~149mg/dLおよびやや高め:空腹時血中中性脂肪値150~199mg/dL)とした。
最終的に評価した論文数:9報
研究デザイン:ランダム化比較試験
利益相反情報:松谷化学工業㈱より依頼を受け、㈱薬事法マーケティング事務所にて論文スクリーニング業務、統計解析業務等を実施した。また、調査にあたり必要な情報について、松谷化学工業㈱より入手した。
【主な結果】
9報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が食後血中中性脂肪値を有意に低下させることが確認された。難消化性デキストリン(食物繊維として)5gを食事と合わせて摂取することによって、食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する作用が期待できることが示された。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは、効果のない未発表論文を想定しても相当数存在しない限り効
果が覆ることはないと判断されました。これらのことによりエビデンスの強さはA
(強い)と判断されました。ただし、今後の研究によっては、システマティックレ
ビューの結果が変わる可能性があるため、継続した調査が必要である。また、食事
療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響について、さ
らなる研究が必要と考えられる。 |