(ア)標題
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー、及び整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー
(イ)目的
本研究の目的は、健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)に対して難消化性デキストリンを摂 取することにより、食後血糖値の上昇抑制作用が見られるかを確認すること。及び健常成人ある いは便秘傾向の成人に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、整腸作用(便通改善 作用)が見られるかを確認することである。
【適格基準】
・年齢:20歳以上であること。
・性別:問わない。
・臨床試験の内容を十分に理解し、文書による同意を受けている者。
・“(内)食後血糖値の上昇抑制”
疾病に罹患していない者、もしくは境界域血糖値の者。
・“(内)整腸作用”
疾病に罹患していない者、もしくは便秘傾向者。
【除外基準】
・妊娠しているもしくは授乳中の女性。
・その他、データ公正を図るうえで、何らかの問題があると判断される者。
(ウ)背景
“食後血糖値の上昇抑制作用”
我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数の増加、なかでも糖 尿病患者数が増加し、極め深刻な問題の一つとなっている。糖尿病に罹患しないためには、食事 療法などにより、食後の血糖値をコントロールすることが重要である。難消化性デキストリン(水溶 性食物繊維)は食後の血糖値上昇を抑制する作用を持つことが報告されています。その有効性 を評価する為、検証をした。
“整腸作用”
難消化性デキストリンは、便通及び便性改善作用を持つことが報告されている。 便通改善作用 に関しては、難消化性デキストリンが消化酵素による加水分解をほとんど受けず、その大部分が 大腸に到達することにより、糞便容量を増大する為と推定されています。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
“食後血糖値の上昇抑制作用”
本研究のデザインは、システマティックレビューである。PubMed、Cochrane Library、 医中誌 Web、CiNii Articlesの4つの電子データベースを使用し、健常成人を対象に難消化性デキストリ ンを用いて食後血糖値の上昇抑制作用について調査したランダム化比較試験(RCT)を収集し た。各RCT論文の質の評価を行い、3つの評価項目「食後血糖値30分」、「食後血糖値60分」、 「食後血糖値の濃度曲線下面積(AUC 0-120min)」について、難消化性デキストリン摂取群と対 照群の差のデータを統合した。統合の手法は、Random effect modelであるDerSimonian- Laired法を用いた。
“整腸作用”
本研究のデザインは、システマティックレビューである。PubMed、Cochrane Library、 医中誌 Web、CiNii Articlesの4つの電子データベースを使用し、健常成人あるいは便秘傾向の成人を対 象に難消化性デキストリンを用いて整腸作用について調査したランダム化比較試験(RCT)を収 集した。各RCT論文の質の評価を行い、2つの評価項目「排便回数」「排便量」について、難消化 性デキストリン摂取群と対照群の差のデータを統合した。統合の手法は、Random effect model であるDerSimonian-Laired法を用いた。
(オ)主な結果
“食後血糖値の上昇抑制作用”
43報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、全ての評価項目において、
対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が有意に食後血糖値を低下させことが認め られた。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)摂取量の中央値は5gであった。
“整腸作用”
26報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、「排便回数」「排便量」において、対照群と比 較して難消化性デキストリン摂取群は有意な便通改善作用が認められた。さらに、難消化性デキ ストリン(食物繊維として)摂取量の中央値は5gであった。
(カ)科学的根拠の質
“食後血糖値の上昇抑制作用”
対象とする論文は、信頼性の高いランダム化比較試験(RCT)であり、エビデンス総体の質の評 価において、各アウトカムの総例数は308~1,094例と例数が多く、不精確性はないと判断し た。公表バイアスの存在は否定されなかったが、未公表論文を想定しても、総合効果量は有意 であったことから、公表バイアスの影響は小さいと判断した。メタアナリシスによる統合効果量は 有意であった。以上のことから、全てのアウトカムのエビデンスの強さはA(強い)と判断された。
今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続した 調査が必要である。また、食事療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子 の影響について、さらなる研究が必要と考えられる。
“整腸作用”
対象とする論文は、信頼性の高いランダム化比較試験(RCT)であり、エビデンス総体の質の評 価において、「排便回数」、「排便量」、各アウトカムの総例数は1,104例と例数が多く、不精確性 はないと判断した。公表バイアスの存在は否定されなかったが、未公表論文を想定しても、総合 効果量は有意であったことから、公表バイアスの影響は小さいと判断した。メタアナリシスによる 統合効果量は有意であった。以上のことから、各アウトカムのエビデンスの強さはA(強い)と判断 された。今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継 続した調査が必要である。また、整腸作用は生活習慣病も重要な要因であり、一つの食品だけを 摂取すれば問題ないという考えではなく、食生活や運動などにも注意を払う必要がある。適切な 整腸作用を継続するうえで必要な要素として、食事療法だけでなく、運動療法、睡眠などの生活 習慣などとの交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられる。 |