1. 中性脂肪上昇抑制効果
(ア)標題
難消化性デキストリン(食物繊維)(以下、難デキと表記)を用いた健常成人に対する食後血中中性脂肪上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
(イ)目的
空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人に難デキを配合した食品を摂取した場合、難デキを含んでいない食品(プラセボ食品)を摂取した場合と比べ、食後の中性脂肪上昇抑制効果があるか検証する。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国における生活習慣病の患者数が増加しています。脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化疾患や虚血性心疾患を誘発する要因となっており、近年、脂質異常症の一つとして食後に血中中性脂肪値の高い状態が長時間継続する食後高脂血症が、動脈硬化症等の発症を早めるリスク因子であることが明らかとなってきました。一方、第6の栄養素として食物繊維の重要性が報告されていますが、食物繊維の一種である難デキは、食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用を有することが報告され、難デキを関与成分とした特定保健用食品が販売されています。今回、難デキの食後血中中性脂肪値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビューを実施しました。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
検索日:日本国内の文献 2015年6月25日
海外の文献 2015年6月25日
検索対象期間:検索日までの全ての期間
対象集団の特性:空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満の成人
最終的に評価した論文数:9編
研究デザイン:ランダム化比較試験※1を行なっていること
利益相反情報:本システマティックレビューは、難デキの原料供給メーカーである松谷化学工業㈱より依頼を受けた㈱薬事法マーケティング事務所にて実施。
(オ)主な結果
食後血中中性脂肪値2時間、3時間、4時間及び血中濃度曲線下面積と4つの変化量(⊿値)の計8つの評価項目において対照群と比較して有意に値が減少していました。
また、採用論文9報について確認したところ全ての論文に空腹時血中中性脂肪値が150~200mg/dLの者が含まれていましたので、9報のうち原データを確認できる論文1報について健常成人(空腹時血中中性脂肪値150mg/dL未満:10名)のみで再度追加的解析を行った結果、難消化性デキストリン(食物繊維)摂取群は対照群(難消化性デキストリン(食物繊維)を含まない食品又は飲料)と比較して食後1、2、3時間の血中中性脂肪値の実測値および変化量が有意に減少していました。また、食後血中中性脂肪値の濃度曲線下面積においても有意差が認められました。
(カ)科学的根拠の質
いずれの評価項目に関しても異質性は認められず、質は高いと判断しました。しかし、食事療法だけでなく、運動療法やその他生活習慣などとの交絡因子の影響について、さらなる研究が必要と考えます。
2. 血糖値上昇抑制効果
(ア)標題
難デキを用いた健常成人に対する食後血糖の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
(イ)目的
20歳以上の健常者に難デキを配合した食品を摂取した場合と、難デキを含んでいない食品(プラセボ食品)を摂取した場合を比べ、食後の血糖値上昇抑制効果があるか検証する。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国における生活習慣病の患者数が増加しています。その中でも、糖尿病患者数の増加は深刻な問題の一つとなっています。糖尿病に罹患しないためには、食事療法などにより血糖値をコントロールすることが非常に重要ですが、特に、食後血糖値は糖尿病に関する指標として注目されています。食事療法の中で、食物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスクの改善効果が報告されており、食物繊維が有する血糖上昇抑制効果が期待されています。今回、食物繊維のなかでも、特定保健用食品の「血糖値が気になる方に適した食品」に広く使用されている難デキによる食後血糖の上昇抑制作用に関するシステマティックレビューを実施して、その機能性について確認しました。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
検索日:日本国内の文献 2015年1月5日
海外の文献 2015年1月5日
検索対象期間:検索日までの全ての期間
対象集団の特性:20歳以上の疾病に罹患していない、もしくは境界域の者
最終的に評価した論文数:43編
研究デザイン:ランダム化比較試験※1を行っていること
利益相反情報:本システマティックレビューは、難デキの原料供給メーカーである松谷化学工業㈱より依頼を受けた㈱薬事法マーケティング事務所にて実施。
(オ)主な結果
食後血糖値30分、60分および血中濃度曲線下面積の3つの評価項目において、対照食品群と比較して難デキを摂取した群では有意に値が減少していました。また、本システマティックレビューの採用論文の中から健常成人(空腹時血糖値が110mg/dL未満)を対象に実施された論文を調査したところ、対照群と比較して食後血糖値(30分,60分)および食後血糖値の濃度曲線下面積が有意に減少することが明らかになりました。難消化性デキストリン(食物繊維)を5g、食事と合わせて摂取することにより、食後血糖の上昇抑制作用が期待できると考えられました。
(カ)科学的根拠の質
結果が異なるものについて未発表である可能性が考えられましたが、未発表の論文が200編以上存在しない限り結果が覆ることはないと算出され、科学的根拠の質としては非常に高いと判断しました。ただし、運動やその他生活習慣との相互作用について、継続した研究が必要と考えます。
3.整腸作用
(ア)標題
難デキを用いた健常成人に対する整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
(イ)目的
20歳以上の健常者を対象に難デキを配合した食品を摂取した場合と難デキを含んでいない食品(プラセボ食品)を摂取した場合を比べ、排便回数と排便量の増加が見られるか検証する。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化、慢性的な運動不足などにより、国内において生活習慣病の患者数が増加しています。食物繊維は生活習慣病に対する予防効果があると言われていますが、その摂取不足が推測されます。水溶性食物繊維の一種である難デキは便通および便性改善作用を持つことが報告されており、今回、難デキの整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビューを実施し、その機能性について確認しました。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
検索日:日本国内の文献 2014年12月15日
海外の文献 2015年1月5日
検索対象期間:検索日までの全ての期間
対象集団の特性:20歳以上の疾病に罹患していない、もしくは便秘傾向者
最終的に評価した論文数:26編
研究デザイン:ランダム化比較試験※1を行っていること
利益相反情報:本システマティックレビューは、難デキの原料供給メーカーである松谷化学工業㈱より依頼を受けた㈱薬事法マーケティング事務所にて実施。
(オ)主な結果
排便回数、排便量の2つの評価項目において、対照食品群と比較して難デキを摂取した群では有意に増加していました。難デキを食物繊維として5g、食事と合わせて摂取することにより、整腸作用が期待できると考えられました。
(カ)科学的根拠の質
排便回数、排便量に関する異質性については否定できませんでしたが、27の研究例の中で外れた値となっている1つの研究例を除くと異質性は低いと考えられました。整腸作用は食事や運動、睡眠等を含めた生活習慣にも影響を受けると考えられますが、今回は考慮しておらず、それらの相互作用についても継続した研究が必要であると考えます。
〔用語説明〕
※1 ランダム化比較試験
介入群(今回は難デキを摂取した群)と対照群にランダム割り付けを行い、介入の実施後、アウトカムを観察することで介入群と対照群を比較する研究方法。
(構造化抄録) |