1.血圧を下げる機能に関する評価
【標題】
機能性関与成分カカオフラバノール含有食品の摂取による血圧の低下機能に関する研究レビューおよびメタアナリシス
【目的】
研究レビューにより、「健常者(正常高値血圧者を含む)」および「Ⅰ度高血圧者(特定保健用食品の臨床試験で認められている対象者)」を対象に、プラセボの経口摂取と比較して、国内外の論文を検索・調査し、科学的根拠を評価した。
【背景】
日本において生活習慣病の増加が問題となり高血圧もその一つである。高血圧が進むと心不全等の心疾患や脳出血等の脳血管障害等のリスクが高まる。カカオフラバノールには、血管拡張作用や血流改善作用があり、血圧低下作用を有することが報告されており、チョコレートやココア等の食品として摂取することで、健常者(正常高値血圧者を含む)およびI度高血圧者の血圧を低下させる機能があることが報告されている。
【レビュー対象とした研究の特性】
・検索対象期間:~2017年10月
・対象集団の特性:「健常者(正常高値血圧者を含む)」および「Ⅰ度高血圧者(特定保健用食品の臨床試験で認められている対象者)」
・評価した論文数:14報
・研究デザイン:最低2週間、成人を対象に収縮期血圧と拡張期血圧に対するカカオフラバノール含有食品の効果を検討しているランダム化比較試験
・利益相反情報:利益相反情報なし
【主な結果】
健常者(正常高値血圧者を含む) およびI度高血圧者が、カカオフラバノール含有食品(1日当たり10.62~520 mg) の摂取により、プラセボと比較して、統計学的に有意な血圧降下作用が示された。また健常者(正常高値血圧者を含む)のみで層別においても、プラセボ群と比較して定性的、定量的に有意な結果が確認された。
【科学的根拠の質】
盲検バイアスとして盲検化に関する記載がない論文や一重盲検の論文、症例減少バイアスとして脱落例のある論文が一部あるが、いずれの試験も適切にランダム化され研究結果に影響を与えるバイアスリスクは少ないと考えられる。非直接性については低いと判断した。出版バイアスの存在は否定できないが低いと判断した。
2.運動時の身体の柔軟性や筋力、バランス感覚の維持に関する評価
【標題】
機能性関与成分カカオフラバノール含有食品の摂取による運動時の身体の柔軟性や筋力、バランス感覚の維持に関する研究レビュー
【目的】
研究レビューにより、健常な成人男女を対象にウォーミングアップ前に摂取することにより、プラセボ飲料と比較して、柔軟性・筋力・バランス感覚が持続されるかを、国内外の論文を検索・調査し、科学的根拠を評価した。
【背景】
厚生労働省が掲げる健康日本21において「身体活動・運動は、生活習慣病の予防のほか、社会生活機能の維持及び向上並びに生活の質の向上の観点から重要である。」とされている。また健康の維持・増進のためには運動が必要であると捉えられ積極的な運動を求められるが、高齢者は、運動時に転倒等による怪我を負うリスクが存在し、それらのリスクの軽減のためには運動前のウォーミングアップが肝要である。カカオフラバノールには様々な機能が報告されており、運動機能の維持についても機能性があると考え、網羅的に文献を検索する研究レビューを実施した。
【レビュー対象とした研究の特性】
・検索対象期間:~2022年3月
・対象集団の特性:健康な成人男女
・評価した論文数:3報
・研究デザイン:健康な成人男女を対象に運動時の柔軟性、筋力、平衡機能(バランス感覚)に対するカカオフラバノール含有食品の効果を検討しているランダム化比較試験
・利益相反情報:利益相反情報なし
【主な結果】
健康な成人男女が、カカオフラバノール含有食品 (1日当たり30~200 mg) の摂取により、プラセボの経口摂取と比較して、運動時の柔軟性、筋力、平衡機能(バランス感覚)に関する評価において統計学的に有意であることが示された。
【科学的根拠の質】
いずれの試験も、プラセボ対照二重盲検クロスオーバー法により実施され、結果の信頼性は高いと考えられ、研究結果に影響を与えるバイアスリスクは低いと考えられる。総合的なバイアスリスク、非直接性、不精確性、非一貫性については低いと判断した。出版バイアスの存在は否定できないが低いと判断した。
3.末梢血流改善機能および表面温度を維持する機能に関する評価
【標題】
機能性関与成分カカオポリフェノール(フラバノールとして)を用いた健常者における末梢血流を改善し、表面温度を維持する機能に関する研究レビュー
【目的】
研究レビューにより、健常者が経口単回摂取することで、プラセボ食品と比較して、末梢血流を改善し、表面温度を維持する機能がみられるかを、国内外の論文を検索・調査し、科学的根拠を評価した。
【背景】
ココアの摂取によって微小循環血流の増加との関連を示唆する末梢皮膚温度の改善効果が報告されている。しかし、カカオフラバノールとしての摂取が日常生活で手先などに冷えを感じる人の末梢血流や末梢皮膚温度の維持や改善を検証した研究レビューはない。
【レビューを対象とした研究の特性】
・検索対象期間:~2021年12月
・対象集団の特性:疾病に罹患していない健常
・評価した論文数:9報
・研究デザイン:ランダム化比較試験(RCT)
・利益相反情報:利益相反情報なし。
【主な結果】
カカオフラバノールを30mg以上摂取することで、冷えにより低下した末梢血流を改善し、表面温度を維持する機能が確認された。なお 採用された9報全ての研究において、カカオフラバノールの摂取と因果関係がある有害事象は認められなかった。
【科学的根拠の質】
英語および日本語の論文のみを抽出対象としていることから、言語バイアスについて否定できないが、採用論文のいずれの研究もプラセボ対照二重盲検クロスオーバー法により実施しており結果の信頼性は高いと考えられる。 |