①HDLコレステロールの増加機能
【標題】
機能性関与成分カカオフラバノールの摂取によるHDLコレステロール増加機能に関する研究レビュー
【目的】
疾病に罹患していない健常成人に対して、カカオフラバノール含有食品を経口摂取することにより、プラセボの経口摂取と比較して、血中HDLコレステロールを増加する機能がみられるか評価した。
【背景】
わが国では、生活習慣病の罹患者数が増加しており、その中でも脂質代謝異常は動脈硬化を発症させる要因の1つとされている。血中HDLコレステロールの低下は冠動脈疾患や脳梗塞など動脈硬化性疾患のリスクを上げ、血中HDLコレステロールの上昇は発症リスク低減へつながる。その理由としては、善玉コレステロールといわれる血中HDLコレステロールは血管壁にたまったコレステロールを取り除き、肝臓へもどす働きをするためである。また、チョコレートの主原料であるカカオ豆にはフラバノールが豊富に含まれており、カカオフラバノールは抗酸化や抗炎症作用、酸化LDLコレステロールの抑制作用などが報告されている。さらに、カカオフラバノールによる血中HDLコレステロール増加作用について複数の論文はあるが、疾病に罹患していない健常成人について統合的に評価した報告はない。
【レビュー対象とした研究の特性】
5種の文献データベースに公開された論文から2022年6月8日までに公開されている血中HDLコレステロールに対するカカオフラバノールの効果を検討している査読付き臨床試験論文を検索した。被験者は妊産婦及び授乳婦を除く疾病に罹患していない健常成人(血中HDLコレステロール40 mg/dL以上の者)とした。その結果、適格基準に合致した7報の論文を採用した。
【主な結果】
検証の結果、7報中5報でカカオフラバノールによる血中HDLコレステロール増加が確認された。その有効摂取量は45.3~466mgであった。以上より、カカオフラバノール100㎎を含む本製品は血中HDLコレステロールを増加させる機能性表示食品として適切であると判断した。
【科学的根拠の質】
参加者や評価者への盲検化に関する記載がないものが6報、一部ランダム化されていないものが2報確認された。ただし、非ランダム化の試験についてはクロスオーバー試験として適切に試験が実施されており、その他の論文においても適切にランダム化比較試験が実施されていた。また、全ての論文において適切な統計解析が実施されており、研究結果に影響を与えるバイアスリスクは少ないと考えられ、本レビューの科学的根拠の質は確保されていると判断した。なお、限界として出版バイアスの存在は否定できないことから、本効果を検証するためのさらなる臨床試験が望まれる。
②血圧の低下機能
【標題】
機能性関与成分カカオフラバノールの摂取による血圧低下機能に関する研究レビュー
【目的】
疾病に罹患していない健常成人(正常高値血圧者を含む)およびⅠ度高血圧者に対して、カカオフラバノール含有食品を2週間以上摂取することにより、プラセボ食品の経口摂取と比較して、血圧を低下する機能がみられるか評価した。
【背景】
わが国では高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の罹患者数が増加している。高血圧は動脈血圧の上昇を伴う慢性的な病状であり、脳神経血管病の最大の危険因子とされている。チョコレートの主原料であるカカオ豆にはフラバノールが豊富に含まれており、カカオフラバノールは血流(末梢)改善作用が報告されている。さらに、カカオフラバノールを摂取することで疾病に罹患していない健常成人(正常高値血圧者を含む)およびⅠ度高血圧者の血圧低下作用に関する複数の論文報告がある。
【レビュー対象とした研究の特性】
5種の文献データベースに公開された論文から2021年9月14日までに公開されている血圧に対するカカオフラバノールの効果を検討している査読付き臨床試験論文を検索した。被験者は妊産婦及び授乳婦を除く疾病に罹患していない健常成人(正常高値血圧者を含む)およびⅠ度高血圧者とした。その結果、適格基準に合致した11報の論文を採用した。
【主な結果】
各評価項目(収縮期血圧、拡張期血圧)において、プラセボ摂取群と比較して有意差が認められた研究は11報の採用論文のうちそれぞれ6報であり、肯定的な結果が得られた論文数が上回っている。さらに、正常高値血圧者を含む健常成人を対象とした層別解析においても、「収縮期血圧」「拡張期血圧」で半数の論文でプラセボ群との有意差がみられている。よって、「収縮期血圧」「拡張期血圧」ともに一貫して有効性が認められていることからもカカオフラバノールの摂取により、血圧に対する効果を期待できるものと考えられる。
また、カカオフラバノールの有効摂取量は10.62~450 mgであった。よって、カカオフラバノール100㎎を含む本製品は血圧を低下させる機能性表示食品として適切であると判断した。
【科学的根拠の質】
盲検化の方法が不明である論文が1報、一重盲検の論文が4報、症例減少バイアスとして、解析対象から外れた被験者が存在する論文が3報みられた。ただし、全ての論文において適切にランダム化比較試験が実施され、適切な統計解析が実施されており、その他バイアスリスクに関しても、研究に影響を与える要因は確認できなかった。よって、本レビューの科学的根拠の質は確保されていると判断した。なお、限界として出版バイアスの存在は否定できないことから、本効果を検証するためのさらなる臨床試験が望まれる。 |