①血圧
【標題】
最終製品ごま茶+GABAに含有する機能性関与成分GABAによる血圧低下の機能性に関する定性的研究レビュー
【目的】
日本人の正常高値血圧者およびⅠ度高血圧者に対して、GABAを含む食品の12週間以上の継続摂取が、血圧低下効果を有するかを明らかにするため、定性的研究レビューを実施した。
【背景】
高血圧は脳卒中、心臓病、腎臓病等の原因疾患であることから、高血圧への対策は重要だとされている。平成29年の国民健康・栄養調査では収縮期血圧が140 mmHg以上の者の割合は男性37.0%、女性27.8%と報告されている。
GABAは、自然界に広く分布する成分で高血圧者の血圧を低下させる作用が報告されている。
そこで、疾病に罹患していない者(正常高値血圧者)およびⅠ度高血圧者に対するGABAの血圧低下効果を定性的研究レビューで検証した。
【レビュー対象とした研究の特性】
文献検索については、2018年10月15または19日に検索期間は限定せずに検索日までを対象として実施した。未報告研究については、2018年10月17日にUMIN臨床試験登録システムで検索した。日本人の疾病に罹患していない者(正常高値血圧者:未成年者、妊産婦、授乳婦は除く)およびⅠ度高血圧者を対象とし、ランダム化二重盲験プラセボ対照比較試験で効果を調べた5報を最終的に評価した。採用された文献5報は全て日本語で記載されており、5報全てで著者に試験食品の製造元の社員が含まれていた。
【主な結果】
検索の結果、5報の文献を採用した。5報は全て日本人の成人男女の疾病に罹患していない者(正常高値血圧者)およびⅠ度高血圧者を対象としていた。5報全てで疾病に罹患していない者(正常高値血圧者)での層別解析を行っていた。罹患していない者(正常高値血圧者)およびⅠ度高血圧者を対象とした5報のうち4報で、GABAの12週間以上の継続摂取により対照群と比較して収縮期血圧と拡張期血圧の有意な低下が確認された。罹患していない者(正常高値血圧者)での層別解析を行った5報のうち4報でも同様に、GABAの12週間以上の摂取により対照群と比較して収縮期血圧と拡張期血圧の有意な低下が確認された。本研究レビューにおいて、罹患していない者(正常高値血圧者)およびⅠ度高血圧者を対象として効果が認められた5報中4報、罹患していない者(正常高値血圧者)のみを対象として効果が認められた5報中4報のGABAの摂取量がいずれも20~80 mg/日であったことから、GABA(20mg/日以上)の摂取は収縮期血圧と拡張期血圧を有意に低下させる肯定的な結果が得られた。
【科学的根拠の質】
バイアスリスクについては、採用論文5報全てのバイアスリスクのまとめの評価が低であったことから、エビデンス総体のバイアスリスクも低いと評価した。
非直接性については、採用論文5報全ての非直接性のまとめの評価が低であったことから、低いと評価した。
非一貫性については、5報のうち4報が「効果あり」、1報が「効果なし」であったことから、エビデンス総体の非一貫性は低いと評価した。
不精確については、全ての研究で十分な症例数を達成しており、特に問題は確認されなかった。
出版バイアスについては、臨床試験登録された文献がなく、5報全てで著者に試験食品の製造元の社員が含まれることから、エビデンス総体の出版バイアスは中/疑いと評価した。
以上のことから、エビデンス総体に影響を与える重大なリスクはないと判断した。
本研究レビューの限界として、採用文献数が5報と少ないこと、GABAの摂取期間が12週間~16週間と短く、長期に摂取した場合の効果が不明であることなどがある。しかしながら、採用文献5報全てが、「特定保健用食品の表示許可等について」(平成26年10月30日付け 消食表第259号)の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」7)の、有効性に関する試験の血圧関係の試験方法に従った試験デザインのため、GABAの血圧低下効果の科学的根拠は担保されていると考えられる。
②ストレス
【標題】
ごま茶+GABAに含まれる機能性関与成分GABAの摂取によるストレスや疲労感の軽減に関する定性的研究レビュー
【目的】
健常成人において、「GABAを含む食品の摂取がストレスや疲労感を軽減するか」を検証するため、定性的研究レビューを実施した。
【背景】
現代社会は日常生活におけるストレスがかかりやすくなっている現状にある。仕事や家事に伴う精神的ストレスや疲労感は作業における一過性のものでやがて緩和されていくが、ストレスに曝され続けると疲労感も蓄積され、作業効率の低下にもつながる。
GABAは自然界に広く分布する非タンパク質構成のアミノ酸の一種で、脳内における主要な抑制性の神経伝達物質であると考えられており、興奮抑制作用によって精神安定作用を有することが知られている。また、GABAにはデスクワークや日常生活での精神的ストレスからくる一時的な疲労感を緩和する報告もあることから、健常成人においてGABAを含む食品を摂取するとストレスや疲労感を軽減する効果があるのかを定性的研究レビューで検証した。
【レビュー対象とした研究の特性】
文献検索については、2020年12月17日に検索期間は限定せずに検索日までの全範囲を対象として実施した。未報告研究については、2020年12月17日にUMIN臨床試験登録システムで検索した。疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦、授乳婦は除く)を対象とし、ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験で効果を調べた2報を最終的に評価した。採用された文献2報は全て日本で実施された試験であり、1報は試験食品提供業者社員が筆者に含まれていた。
【主な結果】
検索の結果、2報の文献を採用し、2報とも健常な成人男性を対象としていた。アウトカム(自律神経活動、唾液中クロモグラニンA、疲労感の自己評価(VAS))について評価した。
自律神経活動については、採用論文のうち自律神経活動を評価している1報の論文で、介入群と対照群の比較において、交感神経活動指標の有意な減少、副交感神経活動指標の有意な増加が確認された。
唾液中クロモグラニンAについては、採用論文のうち1報では介入群と対照群の比較において唾液中クロモグラニンAの有意な低下が確認され、1報では介入群と対照群の比較において有意な差は確認されなかったが、唾液中クロモグラニンAの上昇が緩和されている結果であった。有意差が確認されなかったこの論文では、自律神経活動において有意な差が確認されており、唾液中クロモグラニンAの評価において傾向が確認されていることから、総合的にはGABAの摂取は精神的ストレスに効果があると考察した。
疲労感の自己評価(VAS)については、採用論文のうち、疲労感の自己評価(VAS)を評価している1報の論文で、介入群と対照群の比較において変化量が有意に抑制されていることが確認された。
本研究レビューの結果から、健常な成人がGABAを28mg/回摂取することで、一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和することが示された。
【科学的根拠の質】
バイアスリスクについては、採用文献2報全てが中であったことから、バイアスリスクのまとめは中/疑いと評価した。
非直接性については、GABAの作用機序に性別差はないと考えられるが、採用文献2報とも被験者が男性のみであったため、中/疑いと評価した。
非一貫性については、アウトカム(精神的ストレス)で2報中効果ありが2報、アウトカム(疲労感)で1報中効果ありが1報であったため、中/疑いと評価した。
不精確については、十分なサンプルサイズとは言い切れないため、中/疑いと評価した。
出版バイアスは低と評価した。
以上のことから、エビデンス総体に影響を与える重大なリスクはないと判断した。
本研究レビューの限界として採用文献が少ないことが挙げられる。しかし、被験者数が10人未満のため評価から除外された文献1報においても、健康な成人男女にGABAを摂取させた試験でクロモグラニンA、疲労感の自己評価(VAS)の効果が認められている。さらなるエビデンスの充実が必要であるが、本研究レビューの結果からGABAの摂取は一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和する作用を有すると考えられた。 |