≪1-1.標題≫
マルトビオン酸の骨密度を維持する機能に関する研究レビュー
≪1-2.目的≫
健常な中高年女性を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボ(マルトビオン酸を含まない食品)と比較して、骨密度の増加作用(維持効果)を示すかを検証する。
≪1-3.背景≫
マルトビオン酸はカルシウムなどのミネラル塩の可溶化安定性に優れ、カルシウムの体内吸収を増進させることや、骨再構築(骨リモデリング)過程において骨を溶解する(骨吸収)働きを持つ破骨細胞の分化を抑制することが報告されている。今回、健常成人がマルトビオン酸を摂取した際の骨密度の変化を評価した。
≪1-4.レビュー対象とした研究の特性≫
健常な中高年女性を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボと比較して、骨密度の増加作用(維持効果)を示すかを検証した研究を検索した。国内外の文献データベース等を用いて、2021年5月10日に検索を行った結果、条件を満たした文献は2報であった。2報はいずれも査読付き論文で、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験であった。
≪1-5.主な結果≫
マルトビオン酸を1日あたり2.83~4.83gを24週間継続摂取することで、腰椎の骨密度が有意な増加作用(維持効果)が認められた。
また、採用論文において、試験食品が原因と思われる有害事象は確認されなかった。
≪1-6.科学的根拠の質≫
本レビューの限界として、出版バイアスリスクや症例減少バイアスリスクが挙げられる。また、採用論文2報の腰椎正面総量に関する骨密度は2件とも有意差が確認されるも、1件の左大腿骨総量に有意差が得られていないことから、更なる研究は望まれるも、今後の研究で結論が大きく変更される可能性は低いと判断した。
≪2-1.標題≫
「マルトビオン酸」のミネラル吸収増進に関する研究レビュー
≪2-2.目的≫
健常成人に対して、マルトビオン酸の摂取が、食事に含まれるミネラル成分の吸収を増進するかを検証することを目的とした。
≪2-3.背景≫
マルトビオン酸は分子内に複数の水酸基と一個のカルボキシ基を有しており、Caなどのミネラル塩の可溶化安定性に優れた性質を持つ難消化性の二糖類である。ラットを用いた試験では、マルトビオン酸は、腸管内で分解されることなく、Caなどのミネラル塩の可溶化状態を保ち、腸管からの吸収を促進することで、Caの体内吸収率を増進させる働きを持つことが報告されている。今回、健常成人が食事と一緒にマルトビオン酸を摂取した際の食事に含まれるミネラル成分の吸収増進効果について評価した。
≪2-4.レビュー対象とした研究の特性≫
健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボ(マルトビオン酸Caを含まない食品)と比較して、食事に含まれるミネラル成分(Fe、Zn、Mg、Ca)の腸からの吸収を促進するかを検証した研究を検索した。国内外の文献データベース等を用いて、2021年5月27日に検索を行った結果、条件を満たした文献は3報であった。3報はいずれも査読付き論文で、いずれもランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で、その内1報は、非盲検試験との組み合わせであった。
≪2-5.主な結果≫
マルトビオン酸0.81 gを食事と一緒に単回摂取することで、腸管吸収の指標となる尿中ミネラル(Ca、Mg、Fe)量が8時間後まで有意に増加し、腸管からのミネラル成分の吸収が増進される効果が認められた。また、採用論文において、試験食品が原因と思われる有害事象は確認されなかった。
≪2-6.科学的根拠の質≫
本レビューの限界として、出版バイアスリスクが挙げられる。また、採用論文3報の内1報では傾向差であり有意な結果となっていないことから、更なる研究は望まれるも、今後の研究で結論が大きく変更される可能性は低いと判断した。
≪3-1.標題≫
「マルトビオン酸」の便通改善に関する研究レビュー
≪3-2.目的≫
便秘傾向の健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、便通改善を示すかを検証することを目的とした。
≪3-3.背景≫
マルトビオン酸は難消化性のオリゴ糖であり、動物試験等において、腸内環境改善効果に関する結果が報告されている。今回、健常成人女性がマルトビオン酸を摂取した際の便通改善を評価した。
≪3-4.レビュー対象とした研究の特性≫
便秘傾向の健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボと比較して、便通改善を示すかを検証した研究を検索した。国内外の文献データベース等を用いて、2021年7月5日に検索を行った結果、条件を満たしたRCT研究は2報3試験であった。いずれも査読付き論文で、ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験であった。
≪3-5.主な結果≫
マルトビオン酸一日あたり0.8~2.42gを含む食品を4週間継続摂取することで、排便日数や排便量、日本語版便秘評価尺度やブリストスケールなどの便秘の自覚症状に関して、有意な改善が認められた。
≪3-6.科学的根拠の質≫
本レビューの限界として、出版バイアスリスクや症例減少バイアスリスクが挙げられる。また、採用した2報3試験とも対象者が女性のみであった。マルトビオン酸によりおなかの調子を整えるメカニズム、性別において差異はないと考えられることから、男性への外挿も可能であると判断したが、今後更なるエビデンスの蓄積が望まれる。 |