①善玉菌として知られているビフィズス菌を増やすことで腸内環境を改善する機能
(ア)標題
グアーガム分解物(食物繊維)による善玉菌(ビフィズス菌)を増やして腸内環境を改善する機能に関するシステマティックレビュー
(イ)目的
健常者を対象に、グアーガム分解物を含む食品を摂取させると善玉菌(ビフィズス菌)を増やして腸内環境を改善するかについて検証しました。
(ウ)背景
腸内細菌の一種であるBifidobacterium属細菌(ビフィズス菌)には、便秘改善や有害菌の排除、発ガン関連酵素の活性低下などの有用作用が報告されており、有用菌の代表として一般に広く知られています。一方、グアーガム分解物には摂取後に糞便中のビフィズス菌が増加したという研究報告はあるものの、ビフィズス菌を増やして腸内環境を良好にする機能に関して統合的な判断はされていませんでした。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
「PubMed」「JDreamⅢ」を用いて、英語および日本語による文献検索を行いました。対象集団は健常者とし、グアーガム分解物を含む食品の摂取による糞便中のビフィズス菌の増加作用を目的とした介入試験研究を対象として、研究レビューを実施しました。適格基準に合致した文献は査読付き論文2報であり、試験デザインはランダム化コントロール比較試験(RCT)でした。
(オ)主な結果
選定された2報を評価した結果、1日あたりグアーガム分解物3.5 g以上を摂取することにより、プラセボ摂取時と比較して健常者の糞便中のビフィズス菌が有意に増加することが認められました。従って、グアーガム分解物には善玉菌(ビフィズス菌)を増やして腸内環境を改善する機能があると考えられます。
(カ)科学的根拠の質
調査対象の文献2報は査読付き論文であり、研究デザインがランダム化コントロール比較試験(RCT)であったため、いずれも研究の質は高く、善玉菌(ビフィズス菌)を増やして腸内環境を改善する機能に関して一定の根拠が認められました。しかしながら、採用文献が2報と十分とは言えず、また、バイアスリスクにやや疑いが認められ、出版バイアスの可能性も否定できないことから、更なる臨床研究が望まれます。
②便秘気味の方のお通じを改善する機能
(ア)標題
グアーガム分解物(食物繊維)の便秘気味の健常者に対する便通改善作用に関する研究レビュー
(イ)目的
本研究レビューは、グアーガム分解物(食物繊維)による便秘気味の健常者に対する便通改善作用を明らかにすることを目的とした。
(ウ)背景
グアーガム分解物は、腸内細菌叢を良好に維持し、腸内細菌の有用な代謝産物である短鎖脂肪酸産生を促進し、便通を改善するだけではなく軟便も改善するなど、腸内環境改善作用について多くの報告がある。そこで、研究レビューを実施し、便秘気味の健常者におけるグアーガム分解物の便通改善作用について検証することとした。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
「PubMed」「JDreamⅢ」を用いて、英語および日本語による文献検索を行った。対象集団は便秘気味の健常者とし、グアーガム分解物を含む食品の摂取による便通改善を目的とした介入試験研究を対象として、研究レビューを実施した。適格基準に合致した文献は査読付き論文3報であり、試験デザインはランダム化コントロール比較試験(RCT)であった。
(オ)主な結果
採用文献3報の評価を行った結果、グアーガム分解物(食物繊維)を1日あたり4.0 g~6.1 g摂取することで、プラセボと比べて、有意に便秘気味の健常者の排便回数および排便量が増加し、便通が改善された。
(カ)科学的根拠の質
調査対象の文献3報は査読付き論文であり、研究デザインがランダム化コントロール比較試験(RCT)であったため、研究の質は高く、便秘気味の健常者の便通を改善する機能に関して一定の根拠が認められた。しかし、採用文献が3報と少なく、また、バイアスリスクにやや疑いが認められ、出版バイアスの可能性も否定できないことから、さらなる臨床研究が望まれる。
③やや軟らかめの便を改善しておなかの調子を整える機能
(ア)標題
グアーガム分解物(食物繊維)による、やや軟らかめの便を改善しておなかの調子を整える機能に関するシステマティックレビュー
(イ)目的
便がやや軟らかめの方を対象に、グアーガム分解物(食物繊維)を含む食品を摂取すると、やや軟らかめの便性状が改善されお腹の調子を整えるかについて検証した。
(ウ)背景
グアーガム分解物は、規格基準型特定保健用食品の関与成分として、おなかの調子を整えることを表示することが認められている。しかし、やや軟らかめ便を改善しお腹の調子を整えるかを網羅的に検索して評価されたことはなかった。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
2021年までに公開された文献を対象として4つのデータベースを用い、日本語文献は2021年9月9日に、英語文献は2021年9月10日に検索を実施した。対象集団は便がやや軟らかめの方とし、グアーガム分解物摂取群とプラセボ摂取群とを比較した試験デザインである1報の文献を評価した。この文献は原料を販売している企業(太陽化学(株))が資金提供を行い、第三者機関が実施した。論文の著者には太陽化学(株)の従業員が含まれる。
(オ)主な結果
選定された1報を評価した結果、グアーガム分解物(食物繊維)4 gを含む食品を1日1回摂取することにより、含まない食品を摂取した場合と比較して、やや軟らかめの便を改善する作用が認められた。従って、グアーガム分解物(食物繊維)はやや軟らかめの便を改善しておなかの調子を整える機能があると考えられる。
(カ)科学的根拠の質
選定された文献が1報であったため、科学的根拠の一貫性を示すことができなかった。また、出版バイアスとして、未報告研究の存在が否定できないことが研究の限界として挙げられる。しかし、採用文献は査読付き論文であり、研究デザインがランダム化コントロール比較試験(RCT)であったため、科学的根拠の質は高いと考えられる。 |