〇こんにゃく由来グルコシルセラミド
【標題】機能性関与成分こんにゃく由来グルコシルセラミドによる肌の経皮水分蒸散量の低下および角層水分量の上昇に関する機能性の研究レビュー
【目的】(P)疾病に罹患していない者(肌荒れ、肌の乾燥などに悩む健常者)に、(I)こんにゃく由来グルコシルセラミドを含む食品を摂取させると、(C)プラセボ食品の摂取と比較して、(O)肌の経皮水分蒸散量と角層水分量に対して有効か評価すること ※研究デザイン:無作為化比較試験(RCT)による研究を採用した。
【背景】グルコシルセラミドは、こんにゃく、コメ、トウモロコシ、ビート、パイナップルなど様々な植物に含まれており、経皮水分蒸散量を改善することが報告されている。こんにゃく由来グルコシルセラミドに関しても、有効性に関して報告はあるが、網羅的に解析したレビューはない。
【レビュー対象とした研究の特性】検索日(2019年6月14日)以前に検索サイトに登録された英文及び邦文について、こんにゃく由来グルコシルセラミドを健常者に経口摂取させ、肌への作用を観察している文献を検索した。その結果、一次スクリーニング後に文献は62報となった。タイトルと要旨を検証し、56報の文献の本文取り寄せを実施した。本文の内容について読み込みを実施して、適格基準に合致しているかを精査したところ、最終的に5報の文献を評価対象とした。除外文献とした文献については、多くはヒトを対象とした試験でないか、原著論文でなく解説であるものがほとんどで、それ以外はグルコシルセラミド以外の成分の影響が排除できないという理由で除外とした。
【主な結果】こんにゃく由来グルコシルセラミドを配合した食品を、健常な日本人に摂取させた5報の文献を検証した結果、こんにゃく由来グルコシルセラミドを1日当たり0.6mgから1.8mg、2週間から12週間摂取すると、肌の経皮水分蒸散量の低下が有意に観察されている。経皮水分蒸散量を測定項目としている4報すべてで、経皮水分蒸散量の低下が報告されている。また、角層水分量を測定項目にした2報では、角層水分量の上昇傾向は認められたが、有意な差ではなかった。以上のことから、こんにゃく由来グルコシルセラミドを1日当たり、0.6mg~1.8mg、継続して2週間~12週間摂取することで、肌の経皮水分蒸散量の低下が観察された。査読付き文献の結果に限定すると、こんにゃく由来グルコシルセラミドを1日あたり0.6mg~1.8mg、4週間~12週間継続摂取すると経皮水分蒸散量の低下が観察された。さらに、副作用などの安全性に関する報告はなかった。
【科学的根拠の質】採用した文献が5報と少ないため、出版バイアスの検証は実施したが明らかではなかった。また、いずれの研究もUMINに事前登録された研究ではなく、さらに被験者や研究者に販売製品の会社所属の研究員が含まれるなど、利益相反の問題が存在する点が研究の限界として考えられる。今後より質の高い研究結果が報告されることが望まれる。
〇GABA
【標題】GABA摂取による睡眠の質改善機能に関する研究レビュー
【目的】健康な成人男女がGABAを含む食品を摂取した場合と、GABAを含まない食品(プラセボ)を摂取した場合で、日常生活における睡眠の質(眠りの深さ)に対する効果に違いがあるかどうかを検証することを目的とした。
【背景】ストレスは、ヒトの睡眠に様々な影響を及ぼすことが知られている。主観的ストレス、緊張感や不安が多い人に睡眠問題の有症率が高く、ストレスが高いことやストレスにうまく対処できないことは不眠症のリスクを高めてしまう。一時的および日常的なストレスを緩和することは、睡眠に関する諸問題の解決に有効であると考えられる。GABA摂取により、精神的ストレスがかかる作業における一時的な疲労感を軽減することや、睡眠の質を改善することが報告されている。
本研究レビューでは、GABA摂取による日常生活における睡眠の質(眠りの深さ)を改善する効果について、網羅的に検索し、機能性について検討した。なお、睡眠の質(眠りの深さ)の評価方法として、当該分野において学術的に広くコンセンサスが得られている客観的評価法(脳波計)を用いている文献のみを採用した。
【レビュー対象とした研究の特性】英語、日本語の医学論文データベースを検索し、精査をした結果、健康な成人男女を対象とし、GABA摂取時とプラセボ摂取時を比較した試験デザインであり、脳波(ノンレム睡眠時間)を評価している文献として、2報を採用し評価した。
【主な結果】健康な成人男女に対するGABA摂取(100 mg/日)の効果として、採用文献2報で、深い睡眠時間の有意な増加(p<0.05)を示している。また1報では、ストレス状況や疲労感の違いによる層別解析を実施した場合に、一時的な疲労感やストレスをより強く感じている人のノンレム睡眠ステージ3(最も深い眠り)の時間が、GABA摂取時はプラセボ摂取時と比較して有意に増加した。被験者はいずれも健常な範囲の人であることから、GABAは、健康な成人男女において、睡眠の質(眠りの深さ)を向上させる機能を発揮すると評価した。
【科学的根拠の質】論文のバイアス・リスクの評価では、採用論文は低度であった。調査対象とした論文は査読を実施したRCT論文で、客観的評価指標である脳波であるため、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、論文数が少ないこと、バイアス・リスクが完全に否定できなかったことが挙げられる。
〇GABA
【標題】GABAの、デスクワークなどの心理的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に関する研究レビュー
【目的】健康な成人日本人男女がGABAを含む食品を摂取した場合と、GABAを含まない食品(プラセボ)を摂取した場合で、デスクワークなどの心理的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に違いがあるかどうかを検証することを目的とした。
【背景】GABAのデスクワークなどを主体とする精神負荷作業における疲労感の緩和について、個々の文献では報告されているものの、それらを網羅的に評価された文献はなかった。そこでGABAの、心理的ストレスがかかる作業後の疲労感を緩和する機能性について検証するため、本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】外国語文献検索には、PubMed(1946年~2016年)、英語文献検索には、The Cochrane Library(1992年~2016年)のデータベースを用い2016年7月1日に検索を実施した。日本語文献は、医中誌Web(1977年~2016年)、J-DreamⅢ(1975年(医学情報は1981年)~2016年)のデータベースを用い2016年7月3日に検索を実施した。文献を精査し、健常な日本人成人を対象とし、GABAを摂取しない群と比較した試験デザインである7報の文献を評価した。利益相反に関して、申告がない文献もあったが特に問題となるものはなかった。
【主な結果】主観的疲労感(心理的ストレス)としてVASおよびPOMS、唾液中のコルチゾールおよびクロモグラニンA、さらに、脳波の変動、自律神経活動の各指標により心理的ストレスや疲労感を評価した。これらの指標は一時的な心理的ストレスや疲労感を評価する指標として広く用いられ、表示しようとする機能性を評価するのに適した指標である。結果は、28~100mgのGABAを摂取することで、GABAを摂取しない時と比較して、勉強や仕事などによる一時的な心理的ストレスや疲労感を緩和する効果が確認された。 なお、GABAの摂取による副作用などの有害事象の記載はみられなかった。
【科学的根拠の質】最終調査対象とした文献のバイアス・リスクの評価では、採用文献7報中1報が中程度であり、他の6報は低度であった。エビデンスの一貫性など特に問題は認められず、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、報告数、被験者数ともに少ないことから、バイアスの存在が完全に否定できないことが考えられる。 |