【DHAの摂取による認知機能(記憶力)について】
・標題
機能性関与成分ドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取による認知機能の一部である記憶力への効果に関する研究レビュー
・目的
疾病に罹患していない中高齢の方(妊産婦及び授乳婦を除く。)において、DHAを含む食品の摂取が、認知機能の一部である記憶力を維持するか検証するため、定性的研究レビューを実施した。
・背景
これまでDHAの認知機能、特に記憶に関する報告は数多くされているが、一方で疾病に罹患していない成人を対象として網羅的にDHAの記憶に対する効果を評価した研究レビューは少ない。そこで疾病に罹患していない中高齢の方を対象に、DHAの摂取による認知機能の一部である記憶(記憶力)に対する効果について検証することとした。
・レビュー対象とした研究の特性
リサーチクエスチョン「疾病に罹患していない中高齢の方(妊産婦、授乳婦は除く)において、DHAを含む食品の継続摂取は、対照群と比較して認知機能の一部である記憶力を維持するか?」に基づいて、3つのデータベースより文献検索を実施した。検索により特定された文献から適格基準に適合しない文献を除外し、「論文の質の評価」により、一定水準以上の研究レベルがある文献を採用文献とした。
・主な結果
適格基準に合致した4報の文献を採用した。採用した文献4報の質は、いずれも高かった。採用した文献4報のうち2報では、DHAの摂取により認知機能(記憶力)の維持に関して対照群との比較において有意な差が認められた(効果あり)。また1報においてはDHAの摂取前後で言語流暢性課題の結果に有意な差が認められた(判定保留)。その他の1報では、対照群との比較において有意な差は認められなかった(効果なし)が、他の3報と比較するとDHAの摂取量が少なかった。「効果あり」とした採用文献2報のDHA摂取量はそれぞれ480 mgもしくは880 mg/日であったことから、DHA 880 mg/日以上の摂取により疾病に罹患していない中高齢の方において、認知機能の一部である記憶力が維持されることが示唆された。
・科学的根拠の質
本研究レビューの限界としては、採用文献が4報と少ないことが挙げられる。また、採用した文献4報、いずれも外国人を対象としており日本人を対象者として直接評価できていないこと、対象者がいずれも45歳以上の者であり45歳未満の対象者への評価ができていないことも限界の一つとして挙げられる。
しかしながら、DHAの摂取は対照群と比較して認知機能の一部である作業記憶、建物や物の場所などに関連した記憶を維持するという肯定的な結果を得た。さらなるエビデンスの充実が必要ではあるものの、本研究レビューの結果からDHAの摂取は認知機能の一部である記憶力(数字などの情報を一時的に記憶し思い出す力、日常における建物や物の場所を記憶し思い出す力)を維持する機能を有すると考えられた。
【DHA・EPAの摂取による中性脂肪低下機能について】
・標題
機能性関与成分DHA・EPAの摂取による中性脂肪低下作用に関する研究レビュー
・目的
日本人の疾病に罹患していない者(中性脂肪が正常な者:未成年者、妊産婦、授乳婦は除く)と中性脂肪がやや高めの者に対する、DHA・EPAの継続摂取が、中性脂肪低下作用を有するかを明らかにするため、定性的研究レビューを実施した。
・背景
魚油などに多く含まれている多価不飽和脂肪酸であるDHA、EPAは、それぞれn-3(ω3)系脂肪酸に分類される。疫学的研究からn-3系脂肪酸は虚血性心疾患の予防に役立っていることが明らかになってきた。また、EPA製剤は高中性脂肪血症患者の治療に使用されている。そこでDHA・EPAの疾病に罹患していない者と中性脂肪がやや高めの者に対しての中性脂肪低下作用を定性的研究レビューで検証することとした。
・レビュー対象とした研究の特性
リサーチクエスチョン「日本人の疾病に罹患していない者(中性脂肪が正常な者:未成年者、妊産婦、授乳婦は除く)と中性脂肪がやや高めの者に、DHA・EPAを継続摂取させると、プラセボ食品の摂取と比較して、中性脂肪を低下させるか。」に基づいて、検索式を設定し、3つのデータベースより文献検索を実施した。検索により特定された文献から適格基準に適合しない文献を除外し、「論文の質の評価」により、一定水準以上の研究レベルがある文献を採用文献とした。
・主な結果
リサーチクエスチョンに合致する3報の文献を採用した。3報は全て日本人の、中性脂肪が健常域+軽症域の者を対象としていた。そのうち2報で、DHA 260㎎、EPA 600㎎/日の12週間の継続摂取により対照群と比較して、中性脂肪の有意な低下が確認された。また、リサーチクエスチョンに合致する3報の文献のうち2報は、日本人の中性脂肪が健常域の者を対象としていた。そのうち1報で、DHA 260㎎、EPA 600㎎/日の12週間の継続摂取により対照群と比較して、中性脂肪の有意な低下が確認された。本研究レビューの結果からDHA・EPA 860mg/日以上の12週間摂取は、中性脂肪が正常(健常域)およびやや高め(軽症域)の者において、中性脂肪を低下させると考えられた。
・科学的根拠の質
本研究レビューの限界としては、効果ありの文献が健常者+軽症域で1報、健常域のみで1報と少ないことがあげられる。しかしながら、中性脂肪が比較的低めの者を被験者とした効果なしの文献および軽症域以上で効果が認められた文献の結果は、中性脂肪が正常高値域ややや高めの者に対するDHA・EPAの効果を否定するものではなかった。さらなるエビデンスの充実が必要ではあるものの、本研究レビューの結果からDHA・EPAの継続摂取は中性脂肪低下作用を有すると考えられた。 |