【糖の吸収抑制】
(ア)標題
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する糖の吸収抑制作用に関する研究レビュー(メタアナリシス)
(イ)目的
これまでに、難消化性デキストリンの糖の吸収抑制作用について、メタアナリシスによって検証された報告はありません。そこで本研究レビューでは、空腹時血糖値が126 mg/dL未満の成人に対して難消化性デキストリンの単回摂取がプラセボの単回摂取と比較して、糖の吸収抑制作用を示すかどうか検証しました。
(ウ)背景
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加しており、その中でも、糖尿病患者数の増加は、超高齢社会を迎えた日本において極めて深刻な問題のひとつです。一方、難消化性デキストリンは、糖の吸収を抑制し食後血糖値の上昇抑制作用を有することがヒトを対象に実施された試験によって多数検証されています。そこで、本研究レビューでは、健常成人に対して難消化性デキストリンの単回摂取が糖の吸収抑制作用を示すかどうかを明らかにするために、吸収量の指標である血糖濃度曲線下面積(AUC)をアウトカムとして、メタアナリシスを含む研究レビューを実施しました。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
2019年7月4日に、それまでに公表された論文を対象として、空腹時血糖値が126 mg/dL未満の成人を対象に難消化性デキストリンを用いて糖の吸収抑制について調査したランダム化比較試験(RCT)を収集したところ、24報のRCT論文が抽出されました。
(オ)主な結果
メタアナリシスの結果、難消化性デキストリン4.4~9.8 gを単回摂取することによって、対照群と比較して介入群が摂取0~2時間後のAUCを有意に低下させることが確認されました。
(カ)科学的根拠の質
バイアスリスクはランダム化や割付けの隠蔵に関する記載が不十分な論文が散見されたため、「不明」としました。また、アウトカムの総例数は733例と例数が多いことから、不精確性はない(「低」)と判断しました。非直接性および非一貫性も「低」としました。出版バイアスの存在は否定されませんでしたが、その影響は小さいと判断しました。また、採用論文は独立した複数の施設で実施された報告であったため、その他のバイアスも「低」と判断しました。以上のことから、エビデンスの強さを「A(強い)」と判断しました。ただし、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定出来ないため、引き続き検証する必要があります。
【おなかの調子を整える】
(ア) 標題
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
(イ) 目的
健常成人あるいは便秘傾向の成人に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、整腸作用(便通改善作用)が見られるかを確認しました。
(ウ) 背景
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームを初めとした生活習慣病の患者数が増加しており、食生活を見直すことが注目視されています。中でも、食物繊維が糖尿病、肥満といった疾患や生活習慣病に対する予防効果があると言われており、第6の栄養素としてその重要性が認識されています。難消化性デキストリンは、便通および便性改善作用を持つことが報告されており、難消化性デキストリンが消化酵素による加水分解をほとんど受けず、その大部分が大腸に到達することにより、糞便容量を増大することで便通改善作用をもたらすと推定されています。そこで今回、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)を実施しました。
(エ) レビュー対象とした研究の特性
2014年12月15日~2015年1月5日に、それまでに公表された論文を対象として、健常成人あるいは便秘傾向の成人を対象に難消化性デキストリンを用いて整腸作用について調査したランダム化比較試験(RCT)を収集したところ、26報のRCT論文が抽出されました。
(オ) 主な結果
統計解析の結果、「排便回数」「排便量」において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群は有意な便通改善作用が認められました。難消化性デキストリン摂取量の中央値は5 gでした。
(カ) 科学的根拠の質
バイアスリスクは、単盲検や脱落例があるために「疑い」の評価となりましたが、研究の総例数は、1104例と十分であり、不精確性はないと判断しました。非直接性および非一貫性はないと判断しました。また、公表バイアスの存在は否定されませんでしたが、その影響は小さいと判断しました。以上のことから、エビデンスの強さは「A(強い)」と判断されました。ただし今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性があるため、継続した調査が必要です。また、食事療法や運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられます。 |