≪1-1.標題≫
マルトビオン酸Ca(マルトビオン酸として)のミネラル吸収促進に関する研究レビュー
≪1-2.目的≫
健常成人に対して、マルトビオン酸の摂取が、食事に含まれるミネラル成分の吸収を促進するかを検証することを目的とした。
≪1-3.背景≫
マルトビオン酸は分子内に複数の水酸基と一個のカルボキシ基を有しており、Caなどのミネラル塩の可溶化安定性に優れた性質を持つ難消化性の二糖類である。ラットを用いた試験では、マルトビオン酸は、腸管内で分解されることなく、Caなどのミネラル塩の可溶化状態を保ち、腸管からの吸収を促進することで、Caの体内吸収率を増進させる働きを持つことが報告されている。今回、健常成人が食事と一緒にマルトビオン酸を摂取した際の食事に含まれるミネラル成分の吸収促進効果について評価した。
≪1-4.レビュー対象とした研究の特性≫
健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボと比較して、食事に含まれるミネラル成分の腸からの吸収を促進するかを検証した研究を検索した。国内外の文献データベース等を用いて検索を行った結果、条件を満たしたRCT研究は3件であった。
≪1-5. 主な結果≫
健常成人が、マルトビオン酸を0.81 g或いはマルトビオン酸Ca 0.63 g(マルトビオン酸換算で0.6 g)を食事と一緒に単回摂取することで、腸管吸収の指標となる尿中ミネラル(Fe、Zn、Mg、Ca)量が6~8時間後まで有意に増加し、腸管からのミネラル成分の吸収が促進される効果が認められた。よって、食事と一緒にマルトビオン酸0.6 g以上(マルトビオン酸Ca換算で0.63 g以上)を摂取することにより、食事に含まれるミネラル成分 (Fe、Zn、Mg、Ca)の腸からの吸収を促進する効果に有効であると考えられた。
≪1-6.科学的根拠の質≫
本レビューの限界として、出版バイアスリスクが挙げられる。また、RCT研究3件中1件では傾向差であり有意な結果となっていないことから、更なる研究は望まれるも、今後の研究で結論が大きく変更される可能性は低いと判断した。
≪2-1.標題≫
マルトビオン酸Ca(マルトビオン酸として)の骨代謝(骨吸収・骨形成)改善効果に関する研究レビュー
≪2-2.目的≫
健常な中高年の方を対象にマルトビオン酸の摂取が、骨代謝(骨吸収・骨形成)改善効果に有効性を示すかを検証した。
≪2-3.背景≫
マルトビオン酸はカルシウムなどのミネラル塩の可溶化安定性に優れ、カルシウムの体内吸収を増進させることや、骨再構築(骨リモデリング)過程において骨を溶解する(骨吸収)働きを持つ破骨細胞の分化を抑制することが報告されている。
≪2-4.レビュー対象とした研究の特性≫
国内外の文献検索の結果RCT研究5件を採用し、健常な中高年の方がマルトビオン酸を含む食品の摂取した際の骨代謝改善効果に対する有効性(評価指標:骨吸収マーカーの低下、骨形成マーカーの上昇)について定性的なレビューを実施した。
≪2-5.主な結果≫
健常な中高年女性が、マルトビオン酸を1日あたり0.8 gおよび1.6 g、或いはマルトビオン酸Ca 2.54 g(マルトビオン酸換算で2.412 g)を4週間継続摂取することで、骨代謝の指標として用いた骨吸収マーカーの低下や骨形成マーカーの上昇が確認された。
≪2-6.科学的根拠の質≫
本レビューの限界として、出版バイアスリスクが挙げられる。また、RCT研究5件とも、中高年の日本人女性を対象としていたことや、RCT研究2件では、副次アウトカムとして評価した骨代謝マーカーは有意な結果となっていなかった。マルトビオン酸によるCaの腸管吸収を促進する働きや、骨吸収の抑制作用による骨代謝改善に関する作用メカニズムに男女差はないと考えられることから、中高年の男性への外挿も可能であると考えられるが、今後更なるエビデンスの蓄積が望まれる。
≪3-1.標題≫
マルトビオン酸Ca(マルトビオン酸として)の整腸作用に関する研究レビュー
≪3-2.目的≫
健常成人に対して、マルトビオン酸の摂取が、おなかの調子を整え、お通じを改善するかを検証することを目的とした。
≪3-3.背景≫
マルトビオン酸Caは難消化性のオリゴ糖であり、動物試験等において、腸内環境改善効果に関する結果が報告されている。今回、便秘傾向の健常成人がマルトビオン酸を摂取した際の便通改善を評価した。
≪3-4.レビュー対象とした研究の特性≫
便秘傾向の健常成人を対象にマルトビオン酸を含む食品の摂取が、プラセボと比較して、便通改善を示すかを検証した研究を検索した。国内外の文献データベース等を用いて検索を行った結果、条件を満たしたRCT研究は3件であった。
≪3-5.主な結果≫
1日あたりマルトビオン酸として0.8g或いは1.6 g、マルトビオン酸Caとして2.54g(マルトビオン酸換算で2.412 g)を継続摂取により、排便回数や日数が有意に増加し、便秘の自覚症状(便形状・硬さ、排便痛)の改善が認められた。よって1日あたりマルトビオン酸0.8 g以上(マルトビオン酸Ca換算で0.843 g以上)の継続的な摂取は、便秘傾向である健常成人に対して、便の状態(量、形、硬さ)を整え、お通じ(回数、排便痛)を改善する効果に有効であると考えられた。
≪3-6.科学的根拠の質≫
本レビューの限界として、出版バイアスリスクや症例減少バイアスリスクが挙げられる。また、RCT研究3件とも対象者が女性のみであった。マルトビオン酸によりおなかの調子を整えるメカニズムは、年齢や性別において差異はないと考えられることから、他年齢や男性への外挿も可能であると判断したが、今後更なるエビデンスの蓄積が望まれる。 |