安全性 |
1. 食経験の評価
基原原料における喫食実績を述べる。N-アセチルグルコサミン(以下、NAG)はグリコサミノグリカンとして、生体内に分布している。また、NAGは甲殻類や、真菌類の構造成分であるキチン質の構成分子で、食品から長年喫食された経緯がある。
サプリメント等における喫食実績を述べる。NAG配合食品は2000年代初期に発売され、品目、量共に増加傾向にある。NAGの配合量は一日あたり300~1,500mgと幅があるが、これまで重篤な健康被害は報告されていない。NAGは低分子化合物であり、基原生物による消化・吸収過程について違いは無い。
2. 安全性の評価
過剰摂取による安全性は、2次情報から、1日摂取量を1,000~1,250mg、8週間~16週間投与したヒト試験で、安全性評価として血液検査値や血圧、体重等の測定結果では異常な変動は見られず、NAGの摂取による健康被害も認められなかった。
1次情報による評価では9件の論文から試験中の有害事象は認められたが、いずれもNAG摂取との因果関係は無いとの報告であった。12,000mg/日、4週間の摂取事例から、これらの結果を総合し、NAGの安全性は十分に評価したと判断した。
3. 医薬品との相互作用
医薬品との相互作用では、同じアミノ糖であるグルコサミンが、ワルファリン等抗凝固薬との相互作用が示唆されている。一方、NAGでは凝集抑制作用が認められなかった研究報告から、医薬品との相互作用は認められないと評価した。 |
機能性 |
1.「ひざ関節の悩みを改善」の表示について
(ア)標題
最終製品「N-アセチルグルコサミンW」に含有する機能性関与成分N-アセチルグルコサミンによる膝関節の機能改善に関するシステマティックレビュー
(イ)目的
膝関節に違和感をもつ者を含む成人健常者を対象に、N-アセチルグルコサミンの継続的な経口摂取による膝関節機能の改善効果についてシステマティックレビューを実施した。
(ウ)背景
N-アセチルグルコサミンのヒト経口摂取による膝関節への影響について評価した文献の検索を行った。独立したレビュアーA、BがPubMed、JDreamⅢ、UMIN-CTRにて文献検索を実施した。事前に設定した適格基準に基づいて文献を選定した。研究の質はバイアスリスク、非直接性を評価した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
採択されたヒトランダム化比較臨床試験の文献5報は、全て膝に違和感がある者、またはK-L分類0またはⅠと診断された健常者を対象としたヒトランダム化比較臨床試験であった。
(オ)主な結果
全ての採択文献においてN-アセチルグルコサミンの投与は膝関節の機能、及び軟骨代謝マーカーを有意に改善する結果であることを報告していた。
(カ)科学的根拠の質
本レビューにおける研究全体のバイアスリスク、非直接性は低いとの評価を行なった。一方、不精確は全ての採択文献で実績のある数値または経験的な数値ではあるものの、検定力分析は実施されていなかった。非一貫性はJOAスコアでは2報で有意な効果が認められ、VASスコアでは有意な効果が認められた文献と認められなかった文献が同数、軟骨代謝マーカーでは有意な効果が認められた文献が4報中3報、認められなかった文献が4報中1報で有意な効果が認められた文献数が上回っていた。その他、出版バイアスは全ての採択文献において否定することが出来なかった。
これらの指標から、表示内容における作用部位は膝関節とし、機能性を感じる可能性がある状況を歩行や階段昇降時と規定していることから、表示しようとする機能性の関連性に齟齬はないと考えられる。
2.「肌の潤いに役立つ」の表示について
(ア)標題
最終製品「N-アセチルグルコサミンW」に含有する機能性関与成分N-アセチルグルコサミンによる皮膚水分含有量に及ぼす影響に関するシステマティックレビュー
(イ)目的
皮膚の乾燥が気になる健常成人を対象にN-アセチルグルコサミンの継続摂取による皮膚水分量に及ぼす影響について研究レビューを実施した。
(ウ)背景
基礎疾患がなく、皮膚の乾燥が気になる健常成人を被験者とし、N-アセチルグルコサミンまたはプラセボを経口投与し、皮膚角質水分量をアウトカムとしたプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)で研究レビューを実施した。
データベースはPubMed、JDreamⅢを用い、ヒトを対象とするRCT論文を対象に検索式を設定し、外用など経口投与でないもの、アウトカムが異なるもの、N-アセチルグルコサミンと他成分の共摂取によるものを除外対象として文献を収集した。研究の質はバイアスリスク、非直接性を評価した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
採択されたヒトランダム化比較臨床試験の文献2報の論文が研究レビューの対象となった。
(オ)主な結果
対象となった論文は健常成人女性を対象にプラセボを用いた二重盲検のヒト試験であり、皮膚角質水分量を評価した結果、N-アセチルグルコサミンの継続摂取は皮膚角質水分量の増加が確認された。
(カ)科学的根拠の質
本レビューにおける研究全体のバイアスリスクは皮膚水分量、油分量、酸性度において低が1報、中が1報、医師による皮膚学的臨床所見において低が1報、中が1報、顕微鏡的3次元皮膚表面解析では低が1報であった。
非直接性は全てのアウトカム指標で中と評価した。
不精確は全ての採択文献で実績のある数値または経験的な数値ではあるものの、検定力分析は実施されていなかった事から全てのアウトカム指標で-1とした。非一貫性は皮膚水分量、油分量、酸性度において全ての文献で群内有意差、角層水分量において2報中1報に群間有意差(左頬)、改善傾向(左眼下)、医師所見において2報中1報に群内有意差、画像解析では1報に群内有意差が観察された。その他、出版バイアスは全ての採択文献において否定することが出来なかった。3つのアウトカム指標全てにおいて群内有意差が観察され、特に水分量に関してはプラセボ群との群間有意差が観察された。
採択論文における試験時の季節や被験者の被服状況に対しての考察内容と、皮膚(肌)は全身表面を構成する組織で部位による構造に顕著な違いが無いこと、N-アセチルグルコサミンの吸収、代謝過程を考察し、採用文献の試験結果を全身の肌に外挿するのは問題無いと考えられた。
上記の結果を踏まえ、表示内容における作用部位は肌とし、機能性を感じる状況を水分の保持に関わる場面と規定したことから、表示しようとする機能性の関連性に齟齬はないと考えられる。 |