1.食後の血糖値の上昇をおだやかにする機能
【標題】
難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する食後血糖値の上昇抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
【目的】
健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)に対して、難消化性デキストリン(食物繊維)を摂取することにより、食後血糖値の上昇を抑制するかについて評価しました。
【背景】
現在、糖尿病患者数の増加は、超高齢社会を迎えた日本において極めて深刻な問題のひとつとなっています。糖尿病に罹患しないためには、食事療法などにより食後血糖値をコントロールすることが非常に重要であるとされています。そこで、難消化性デキストリンの食後血糖値の上昇抑制作用についてレビューを実施しました。
【レビュー対象とした研究の特性】
・論文検索日:2014年12月25日~2015年1月5日
・検索対象期間:各データベース開設または搭載されている最初の時点から検索日までの全期間
・対象集団の特性:健常成人(空腹時血糖値126mg/dL未満)
・最終的に評価した論文数:43報
・研究デザイン:ランダム化比較試験
・利益相反情報:松谷化学工業㈱の依頼により㈱薬事法マーケティング事務所がシステマティックレビューを実施
【主な結果】
統計解析の結果、「食後血糖値30分」「食後血糖値60分」「食後血糖値の濃度曲線下面積(AUC0-120min)」において、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が有意に食後血糖値を低下させることが確認されました。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)5 gを摂取することによって、食後血糖値の上昇抑制作用が期待できることが示されました。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは十分な被験者数で評価されていることから、効果のない未発表論文を想定しても相当数存在しない限り効果が覆らないことが示されました。これらのことより得られた科学的根拠は強いと判断しました。ただし、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定できないため継続した調査が必要であると考えます。
2.食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする機能
【標題】
難消化性デキストリン(食物繊維)による健常成人に対する食後中性脂肪の上昇抑制作用もしくは脂肪の吸収抑制作用に関する研究レビュー(メタアナリシスおよび定性的研究レビュー)
【目的】
健常成人(空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満)が食事と共に難消化性デキストリン(食物繊維)を摂取すると、食後中性脂肪の上昇もしくは脂肪の吸収を抑制するかについて評価しました。
【背景】
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、我が国におけるメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病の患者数が増加しています。生活習慣病のなかでも、特に脂質異常症は動脈硬化の危険因子であることから、食生活の改善などによる一次予防が望まれています。さらに、近年、脂質異常症の1つとして食後に血中中性脂肪値の高い状態が長時間継続する食後高脂血症が、動脈硬化症や冠動脈疾患の発症を早めるリスク因子であることが明らかとなってきたことから、脂肪の吸収を抑制し食後血中中性脂肪値の上昇を抑制する食品素材が注目されています。そこで、難消化性デキストリンの食後中性脂肪の上昇抑制作用もしくは脂肪の吸収抑制作用についてPRISMA声明(2020年版)に基づく研究レビューを実施しました。
【レビュー対象とした研究の特性】
・論文検索日:2024年3月14日
・検索対象期間:各データベース開設または搭載されている最初の時点から検索日までの全期間
・対象集団の特性:健常成人(空腹時血中中性脂肪値が200mg/dL未満)
・最終的に評価した論文数:14報
・研究デザイン:ランダム化比較試験
・利益相反情報:松谷化学工業㈱が研究レビューを実施
【主な結果】
統計解析の結果、対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が「食後血中中性脂肪値(2,3,4時間)」「食後血中中性脂肪値の濃度曲線下面積(AUC0-6h)」を有意に低下させることが確認されました。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)5 gを摂取することによって、食後中性脂肪の上昇抑制作用もしくは脂肪の吸収抑制作用が期待できることが示されました。また、空腹時血中中性脂肪値が150mg/dL未満の正常範囲対象者においても同様に食後中性脂肪の上昇抑制作用もしくは脂肪の吸収抑制作用が期待できることが示されました。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは十分な被験者数で評価されていることから、効果のない未発表論文を想定しても相当数存在しない限り効果が覆らないことが示されました。これらのことより得られた科学的根拠は強いと判断しました。ただし、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定できないため継続した調査が必要であると考えます。
3. 内臓脂肪を減らす機能
【標題】
難消化性デキストリンの健常成人に対する内臓脂肪低減作用に関する研究レビュー
【目的】
健常成人(肥満1度:BMI値25 kg/m2以上30 kg/m2未満を含む)に対して、難消化性デキストリン(食物繊維)を摂取することにより、内臓脂肪を低減するかについて評価しました。
【背景】
令和元(2019)年度の国民健康・栄養調査結果によると、肥満者の割合は20歳以上の男性で33.0%、女性で22.3%です。この10年間で有意な増減はみられないものの肥満者の割合は高い状態が続いています。肥満は脂肪組織が過剰蓄積した状態と定義され、内臓脂肪の過剰蓄積が糖代謝異常や脂質代謝異常、循環器疾患等の合併症と密接に関連することが明らかにされています。内臓脂肪型肥満によって複数のリスクが集積された状態がメタボリックシンドロームと定義されており、内臓脂肪蓄積の予防や改善は重要な課題です。そこで、難消化性デキストリンの内臓脂肪低減作用についてレビューを実施しました。
【レビュー対象とした研究の特性】
・論文検索日:2021年4月13日
・検索対象期間:各データベース開設または搭載されている最初の時点から検索日までの全期間
・対象集団の特性:健常成人(肥満1度:BMI値25 kg/m2以上30 kg/m2未満を含む)
・最終的に評価した論文数:2報
・研究デザイン:ランダム化比較試験
・利益相反情報:松谷化学工業㈱が研究レビューを実施
【主な結果】
いずれの採用文献においても対照群と比較して難消化性デキストリン摂取群が長期摂取後の内臓脂肪面積値を有意に低下させることが確認されました。さらに、難消化性デキストリン(食物繊維として)5 gを1日に3回食事と共に長期摂取することによって、内臓脂肪の低減作用が期待できることが示されました。
【科学的根拠の質】
本研究レビューは研究数が2報と少なくメタアナリシスを実施できなかったため定性的なレビューとしました。しかし、いずれの研究もランダム化比較試験で実施され、一貫して有意な結果が得られていたため信頼性は高いと考えられました。ただし、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定できないため継続した調査が必要であると考えます。 |