①睡眠の質(寝入りばなの眠りの深さ)の向上
【標題】GABA摂取による睡眠の質改善機能に関するシステマティックレビュー
【目的】日常生活における睡眠の質(眠りの深さ)に対するGABA摂取の機能性を調べるため、研究レビューを実施しました。
【背景】ストレスは、ヒトの睡眠に様々な影響を及ぼすことが知られています。GABAは、睡眠の質を改善することが報告されていますが、質の高い研究レビューがほとんどないため、網羅的な文献検索にて研究レビューを実施しました。
【レビュー対象とした研究の特性】採用文献は日本人を対象とした研究で、一時的な疲労感やストレスを感じている健康な男女勤労者に対して、GABA(100 mg)を2週間摂取させるプラセボ対照無作為化二重盲検クロスオーバー試験でした。
【主な結果】ストレス状況や疲労感の違いによる層別解析を実施した場合に、一時的な疲労感やストレスをより強く感じている人の徐波睡眠(ノンレム睡眠ステージ3時間)が有意に増加しました。このことから、GABAは睡眠の質に不満を持ち、かつ、一時的な疲労感やストレスを感じている者において、睡眠の質(寝入りばなの眠りの深さ)を向上する機能を発揮すると考えられました。
【科学的根拠の質】採用された文献において、PICOに対して肯定的な結果が得られていました。採用された文献全体のバイアスリスク、非直接性のリスクは「低」であり、表示しようとする機能性に対し科学的根拠を有すると考えられました。採用文献が1報であることから、出版バイアスの存在が疑われます。日本人を対象とした研究であり、日本人への外挿性については問題ないと考えられます。
②すっきりとした目覚めに役立つ機能
【標題】機能性関与成分GABAの日常生活における睡眠の質(目覚め)の改善に関するシステマティックレビュー
【目的】日常生活における睡眠後の目覚めに対するGABA摂取の機能性を調べるため、研究レビューを実施しました。
【背景】日常生活において、現代人は十分な休息が得られず、継続して負荷を受けることはしばしば起こります。このような状況は、睡眠の質低下につながり、睡眠直後の目覚めの悪さに繋がると考えられます。そこで、本研究レビューでは、GABAを経口摂取し、日常生活における睡眠の質(目覚め)を向上させるかについて、網羅的に文献を検索し、機能性について検討しました。
【レビュー対象とした研究の特性】採用文献は日本人を対象とした査読付きのRCT論文で、睡眠の質がやや低い疾病に罹患していない者に対して、GABA(100 mg)を1週間摂取させるプラセボ対照無作為化単盲検クロスオーバー試験でした。
【主な結果】健康な成人男女に対するGABA摂取による目覚めへの影響について、主観評価で肯定的な結果が得られていました。GABA摂取により、睡眠の質(目覚め)の向上が主観的に認められたと考えられ、GABAの摂取は日常生活におけるすっきりとした目覚めをサポートする機能があることが判断されました。
【科学的根拠の質】本研究レビューでは、アウトカムレベルやレビューレベルで限界となる項目は認められませんでした。しかし、採用した文献が1報であることから、今後さらなる効果の検証が望まれます。なお、採用文献は、日本人を対象とした研究であり、日本人への外挿性については問題ないと考えられます。
③仕事や勉強などによる一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和する機能
【標題】GABAの、デスクワークなどの精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に関する研究レビュー
【目的】健康な成人日本人男女がGABAを含む食品を摂取した場合と、GABAを含まない食品(プラセボ)を摂取した場合で、デスクワークなどの精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に違いがあるかどうかを検証することを目的とした。
【背景】GABAのデスクワークなどを主体とする精神負荷作業における疲労感の緩和について、個々の文献では報告されているものの、それらを網羅的に評価された文献はなかった。そこでGABAの、精神的ストレスがかかる作業後の疲労感を緩和する機能性について検証するため、本研究レビューを行った。
【レビュー対象とした研究の特性】外国語文献検索には、PubMed(1946年~2016年)、英語文献検索には、The Cochrane Library(1992年~2016年)のデータベースを用い2016年7月1日に検索を実施した。日本語文献は、医中誌Web(1977年~2016年)、J-DreamⅢ(1975年(医学情報は1981年)~2016年)のデータベースを用い2016年7月3日に検索を実施した。文献を精査し、健常な日本人成人を対象とし、GABAを摂取しない群と比較した試験デザインである7報の文献を評価した。利益相反に関して、申告がない論文もあったが特に問題となるものはなかった。
【主な結果】主観的疲労感(精神的ストレス)としてVASおよびPOMS、唾液中のコルチゾールおよびクロモグラニンA、さらに、脳波の変動、自律神経活動の各指標により精神的ストレスや疲労感を評価した。これらの指標は一時的な精神的ストレスや疲労感を評価する指標として広く用いられ、表示しようとする機能性を評価するのに適した指標である。結果は、28~100mgのGABAを摂取することで、GABAを摂取しない時と比較して、勉強や仕事などによる一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和する効果が確認された。 なお、GABAの摂取による副作用などの有害事象の記載はみられなかった。
【科学的根拠の質】最終調査対象とした論文のバイアス・リスクの評価では、採用論文7報中1報が中程度であり、他の6報は低度であった。エビデンスの一貫性など特に問題は認められず、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、報告数、被験者数ともに少ないことから、バイアスの存在が完全に否定できないことが考えられる。
④日常生活で生じる一時的な活気・活力の低下を軽減する機能
【標題】GABAの摂取が、日常生活における一時的な活気・活力の低下に与える機能性に関する研究レビュー
【目的】日常生活や仕事等で、一時的な活気・活力が低下している人に対するGABA摂取による機能性を調べるため、本研究レビューを実施しました。
【背景】一定期間十分な休息を得ずに継続した負荷がかかる場合、一時的に活気・活力が低下し、作業効率が低下するなど、社会生活にも影響することが考えられます。GABAは、日常生活における活気・活力の維持・改善について近年研究されていますが、質の高い研究レビューはなかったため、網羅的な文献検索にて研究レビューを実施しました。
【レビュー対象とした研究の特性】採用文献は日本人を対象とした査読付きのRCT論文で、疲労感や睡眠の問題を自覚しており、一時的に活気・活力が低下している健康な成人男女に対して、GABA(100 mg)を12週間摂取させるプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間試験でした。
【主な結果】評価された1報において、GABA 100 mg/日を摂取したグループで「活気・活力」が、摂取6週目に有意な改善、8週目、12週目に改善傾向を示したことから、GABAには、日常生活で生じる一時的な活気・活力の低下を軽減する機能性があると評価しました。
【科学的根拠の質】採用論文は査読を実施したRCT論文であることから、科学的根拠の質は高く、日本人が対象であることから、日本人への外挿性については問題ないと考えられます。本レビューの限界として、採用論文、被験者とも数が少ないので、研究の限界があり、さらなる質の高い研究が望まれます。 |