●食事から摂取した糖の吸収を抑える機能
標題:難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する糖の吸収抑制作用に関する研究レビュー(メタアナリシス)
目的:健常成人における難消化性デキストリンの単回摂取が、プラセボの単回摂取時と比較して、糖の吸収抑制作用を示すか検証を行った。
背景:糖尿病患者の増加は超高齢化社会を迎えた日本で極めて深刻な問題である。血糖値等の代謝系検診項目に異常がある者は43%が糖尿病に罹患し、「異常なし」の人に比べて10年後の医療費が約1.7倍かかる報告があり、経済的側面からも糖尿病を罹患することの影響は大きい。糖尿病の治療方法は、食事療法、運動療法、薬物療法が一般的であり、食事療法は血糖値管理による症状の安定化、合併症予防を目標として実施されている。糖尿病に罹患しない為には食事療法等により血糖値をコントロールすることが非常に重要であり、特に食後血糖値は糖尿病に関する指標として注目されている。日中の食後血糖値が管理されなくなると、夜間空腹時の血糖値が段階的に悪化し、糖尿病が増悪するという調査結果があることから、食後血糖値の是正は意義がある。中でも食事療法では、食物繊維の摂取による2型糖尿病の発症リスクの改善効果が報告されており、食物繊維が有する血糖値調節効果が期待されている。そこで、ヒトで食事から摂取した糖の吸収を抑制し食後の血糖上昇抑制作用を有することが知られている難消化性デキストリンの機能についてレビューを行った。
レビュー対象とした研究の特性:検索実施日(2019年7月4日)までに発表された論文を対象に検索を行った。レビュー対象は、健常成人(空腹時血糖値が126mg/dL未満)としランダム化比較試験(RCT)論文とした。最終的に評価した論文は24報あった。
主な結果:24報のRCT論文が抽出された。メタアナリシスの結果、難消化性デキストリン4.4~9.8gを単回摂取することによって、対照群と比較して介入群が血糖濃度曲線下面積(AUC0-2hr)を有意に低下させることが確認された。なお、1回の摂取量5gは妥当であると考えられた。
科学的根拠の質:FunnelPlotやTrim&Fillmethodから、出版バイアスの存在は否定されなかった。しかし、未公表論文を想定しても統合効果量は有意であり、出版バイアスの影響は小さいと判断した。以上の結果から、難消化性デキストリンの食事から摂取した糖の吸収を抑える機能について科学的根拠があると判断した。研究の限界として、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定できない為、更なる研究が必要と考えられる。
●食事から摂取した脂肪の吸収を抑える機能
標題:難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する脂肪の吸収抑制作用に関する研究レビュー(メタアナリシス)
目的:健常成人における難消化性デキストリンの単回摂取が、プラセボの単回摂取と比較し、脂肪の吸収抑制作用を示すか検証した。
背景:高血圧、脂質異常症、糖尿病等生活習慣病は動脈硬化疾患や虚血性心疾患を誘発する要因となっており、特に脂質異常症は動脈硬化の危険因子であり食生活の改善等による一次予防が望まれている。さらに、近年、脂質異常症の1つとして食後に血中中性脂肪値の高い状態が長時間継続する食後高脂血症が、動脈硬化症や冠動脈疾患の発症を早めるリスク因子であることが明らかとなった。そこで、ヒトで食事から摂取した脂肪の吸収を抑制し食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制することが知られている難消化性デキストリンの機能についてレビューを行った。
レビュー対象とした研究の特性:検索実施日(2019年7月2日)までに発表された論文を対象に検索を行った。レビュー対象は、健常成人、血中中性脂肪値がやや高めの成人としランダム化比較試験(RCT)論文とした。最終的に評価した論文は9報であった。
※「特定保健用食品の表示許可等について」(平成26年10月30日付け消食表第259号)の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成時の留意事項」において特定保健用食品の試験方法として記載された対象被験者の範囲は正常高値域:空腹時血中中性脂肪値120~149mg/dL、やや高め:空腹時血中中性脂肪値150~199mg/dLとされる。
主な結果:9報のRCT論文が抽出された。メタアナリシスによってデータを統合し統計解析した結果、難消化性デキストリン5~9gを単回摂取することによって、対照群と比較して食後血中中性脂肪濃度曲線下面積(AUC0-6hr)を有意に低下させることが確認された。なお、1回の摂取量5gは妥当であると考えられた。また、論文1 報の追加解析の結果から健常成人(空腹時血中中性脂肪値150mg/dL 未満)においても、摂取群は対象群と比較して有意差が認められたことから健常成人に対しても適用可能であると判断した。
科学的根拠の質:FunnelPlotやTrim&Fillmethodから、出版バイアスの存在は否定されなかった。しかし、未公表論文を想定しても統合効果量は有意なことから、出版バイアスの影響は小さいと判断した。以上の結果から、難消化性デキストリンの食事から摂取した脂肪の吸収を抑える機能について科学的根拠があると判断した。研究の限界として、未報告研究の存在や出版バイアスの可能性が否定できない為、更なる研究が必要と考えられる。
●整腸作用(便通改善作用)
標題:難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)
目的:健常成人あるいは便秘傾向の成人に対して難消化性デキストリンを摂取することにより、整腸作用(便通改善作用)が見られるかを確認した。
背景:食生活見直しが注目視されている中で、食物繊維が糖尿病、肥満といった疾患や生活習慣病に対する予防効果があると言われ、第6の栄養素としてその重要性が認識されている。しかしながら、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食物繊維の摂取基準は18歳以上の男女の目標量が男性19~20g/日、女性17~18g/日と設定されているが、「平成24年国民健康・栄養調査報告」によると、20歳以上の1日当たりの食物繊維摂取量は平均14.8gとされ、食物繊維の摂取不足が推測される。そこで、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)に関するシステマティックレビューを実施した。
レビュー対象とした研究の特性:検索実施日(英文2015年1月5日、和文2014年12月15日)までに発表された論文を対象に検索を行った。レビュー対象は、生活習慣病などの疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦及び授乳婦を除く)としランダム化比較試験(RCT)論文とした。最終的に評価した論文は26報あった。
主な結果:26報のRCT論文が抽出された。統計解析の結果、難消化性デキストリン3.8g~7.7gを摂取することにより、対照群と比較して「排便回数」「排便量」において有意な便通改善作用が認められた。また、1日あたりの摂取目安量5gは妥当であると考えられた。
科学的根拠の質:抽出した全ての論文で、整腸作用(便通改善作用)が有意にあることを示しており、一貫性のある質の高い結果であった。公表バイアスは、Trim&Fillmethodにより「排便回数」で3研究、「排便量」で7研究が追加されたが、統合効果は有意のままであった。さらにFail-SafeNは、「排便回数」331報、「排便量」213報であった。つまり効果のない未公表の研究が前述した報数存在しない限り、難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)は有意であり、公表バイアスによる影響は高くないことが示唆された。以上の結果より、難消化性デキストリンの整腸作用(便通改善作用)の科学的根拠があると判断した。研究の限界として、今後の研究によっては、システマティックレビューの結果が変わる可能性がある為、継続した調査が必要である。また、整腸作用(便通改善作用)は生活習慣も重要な要因であり、1つの食品だけを摂取すれば問題ないという考えではなく、食生活や運動等にも注意を払う必要がある。適切な整腸作用(便通改善作用)を継続するうえで必要な要素として、食事療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣等との交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられる。(構造化抄録) |