1.クロセチン
ア 標題
クロセチンの経口摂取による睡眠の質を向上させる機能に関する研究レビュー
イ 目的
誰に P):疾病に罹患していない健常な成人男女
何をすると I):クロセチンの経口摂取
何と比較して C):プラセボの経口摂取またはクロセチン摂取前との比較
どうなるか O): 睡眠の質の向上
ウ 背景
クロセチンは、ノンレム睡眠(深い眠り)を増強する作用があることが報告されており、眠りの質の向上に役立つと考えられている。そこで、研究レビューを実施しクロセチンが眠りの質を向上させる機能を有するのか検証した。
エ レビュー対象とした研究の特性
複数の研究論文のデータベースを用いて、各データベースに収録されている最初の時点から、検索日(2018年10月11日~16日)までを検索対象期間とし、健常な成人男女がクロセチンを摂取した試験に関する文献を収集した。最終的に評価した2報の文献はいずれもプラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験(ランダム化を伴う)だった。なお、これらの文献に届出者(大正製薬株式会社)の関与は無く、本研究レビューにおいても、届出者(大正製薬株式会社)以外の第三者機関が監修し、届出者の関与は無かった。
オ 主な結果
2報の文献を評価した結果、1日あたり7.5 mgのクロセチンを含む食品を摂取することにより、プラセボ食品(クロセチンを含まない食品。クロセチンを含む原材料を試験に影響を与えない原材料に置き換えたものであり、その他についてはクロセチンを含む食品と同じである食品)を摂取したときよりも、デルタパワー(深い眠りを示す指標)が増加し、睡眠時の中途覚醒回数が減少しており、睡眠の質(眠りの深さ)が向上することがわかった。さらに、起床時の眠気や疲労感も和らぐことがわかった。なお、クロセチンの摂取に起因する副作用などの健康被害は無かったことが報告されている。
カ 科学的根拠の質
評価した文献は、2報ともプラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験(ランダム化を伴う)だった。評価した文献には低~中程度のバイアス(真の値とは異なる結果を導く可能性を高める要因)リスクがある。また、研究数や症例数が少ないことから、科学的根拠の質を高めるため更なる臨床試験が必要であると考えられる。しかしながら、2報とも眠りの質の向上を示すことを報告しており、今後の研究によって効果に関する見解が大きく変更される可能性は低いと考えている。
2.GABA(一時的に落ち込んだ気分を前向きにする(積極的な気分にする、生き生きとした気分にする、やる気にするなどの)機能があることが報告されています。)
ア 標題
GABAの経口摂取が、日常生活における一時的に落ち込んだ気分に与える機能性に関する研究レビュー
イ 目的
誰に P):健康な成人男女
何をすると I):GABAの摂取
何と比較して C):プラセボの摂取
どうなるか O):一時的に落ち込んだ気分に対して影響するか?
ウ 背景
精神的負荷、身体的負荷に関わらず負荷が増大することは十分な休息を得ていれば負担にはならないが、一定期間十分な休息を得ずに継続した負荷がかかる場合、一時的に気分が落ち込むことが考えられる。GABAは、デスクワークなどを主体とする精神負荷作業における一時的なストレスや疲労感の緩和、睡眠の質改善効果、一時的な活気・活力感の維持・改善について、いくつか報告されている。そこで、本研究レビューでは、日常生活において一時的に気分が落ち込んでいる人に対するGABAの摂取による効果について、網羅的に文献を検索し、機能性について検討した。
エ レビュー対象とした研究の特性
英語、日本語の医学論文データベースを用いて、検索日(2019年1月31日)までを対象期間として検索し、文献を精査した。採用し、評価した文献は健康な成人日本人男女を対象とし、GABAを摂取する群とプラセボ群を比較した査読付文献1報であった。なお、この文献に届出者(大正製薬株式会社)の関与は無かった。
オ 主な結果
評価した文献では、日常生活で一時的に気分が落ち込んでいる傾向にあった(うつ病や慢性疲労症候群の疾患ではない)健康な日本人成人男女が、GABA 100 ㎎/日を継続的に摂取した場合に、プラセボを摂取した場合に比べて、POMS2-AS「活気―活力」の指標が有意に改善されたことを報告している。
POMS2-ASは、Positive MoodやNegative Moodといった気分の主観的側面の評価に用いられており、POMS2-AS「活気―活力」は、Positive Moodに該当する尺度であるため、POMS2-AS「活気―活力」を「前向きな気分(Positive Moodの和訳)」と表現した。
評価した文献の結果から、この効果を一般消費者に分かりやすく伝えるために、「一時的に落ち込んだ気分を前向きにする」と表現した。なお、GABAの摂取に起因する副作用などの健康被害は無かったことが報告されている。
カ 科学的根拠の質
文献のバイアスリスクの評価では、採用文献は低度であった。評価した文献はランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験であることから、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、文献数が少ないこと、バイアスリスクが完全に否定できなかったことが挙げられる。
3.GABA(デスクワークなどの精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感を緩和する機能があることが報告されています。)
ア 標題
GABAの経口摂取が、デスクワークなどの精神的ストレスがかかる作業によって生じる一時的な疲労感の緩和効果に関する研究レビュー
イ 目的
誰に P):健康な成人男女
何をすると I):GABAの摂取
何と比較して C):プラセボの摂取
どうなるか O):精神的ストレスがかかる作業後の一時的な疲労感の緩和
ウ 背景
GABAのデスクワークなどを主体とする精神負荷作業における疲労感の緩和について、個々の文献では報告されているものの、それらを網羅的に評価された文献は無かった。そこでGABAの、精神的ストレスがかかる作業後の疲労感を緩和する機能性について検証するため、本研究レビューを行った。
エ レビュー対象とした研究の特性
英語、日本語の医学論文データベースを用いて、検索日(2016年7月1日~3日)までを対象期間として検索し、文献を精査した。採用し、評価した文献は、健常な日本人成人を対象とし、GABAを摂取しない群と比較した試験デザインの文献5報であった。利益相反に関して、申告がない文献もあったが特に問題となるものは無かった。なお、これらの文献に届出者(大正製薬株式会社)の関与は無かった。
オ 主な結果
主観的疲労感としてVASおよびPOMS、唾液中のコルチゾールおよびクロモグラニンA、さらに、脳波の変動、自律神経活動の各指標により疲労感を評価した。これらの指標は一時的な疲労感を評価する指標として広く用いられ、表示しようとする機能性を評価するのに適した指標である。結果は、28~100mgのGABAを摂取することで、GABAを摂取しない時と比較して、デスクワークをはじめとする精神的ストレスがかかる作業後の一時的な疲労感を緩和する効果が確認された。なお、GABAの摂取による副作用などの健康被害の記載はみられなかった。
カ 科学的根拠の質
評価対象とした文献はランダム化されているか不明な文献も含まれておりバイアスリスクの評価では、採用文献5報中2報が中程度であり、他の3報は低度であった。エビデンスの一貫性など特に問題は認められず、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、報告数、被験者数ともに少ないことから、バイアスの存在が完全に否定できないことが考えられる。 |